
Web制作会社に「任せれば安心」という考えではリニューアルはうまくいきません。かといって、自分たちで細かく指示しても、たいていは失敗します。
では、何が必要なのかというと「プロデュース」という第三者の視点だと考えています。完成を目指すのではなく、結果を目指す。その視点の違いが、ホームページリニューアルにおいては成否を分けます。
「ホームページをリニューアルしたい」と言う人が、本当に欲しいものは別にある
クライアントが口にしている言葉と、本当に求めているものはたいていズレています。
「ホームページを新しくリニューアルしたいんです」という相談をいただく時、まず確認することがあります。それは「なぜ今、作り直したいのか」という事です。
「古くなったから」「競合がリニューアルしたから」そういう答えが返ってくることも、正直少なくありません。
でも、それはホームページをリニューアルする理由ではなく、作り替えたくなった「気分」に近いものです。
クライアントが本当に欲しいのは、ホームページではなく「ビジネスの結果」だと思います。問い合わせが増えてほしい、採用がうまくいくようにしたい、会社の信用をちゃんと伝えたい。そういう願望が先にあって、その手段としてホームページのリニューアルが浮かんでいるだけなのです。
ところが、Web制作会社に相談する段階になると、この順番がひっくり返ってしまうことがあります。「どんなデザインにしますか」「どんなページが必要ですか」「いつまでに完成させたいですか」そういうことを聞かれると、クライアントはいつの間にか「完成形をどうするか」という話に引き込まれていくのです。
本来あったはずの「何を実現したいか」という出発点が、どこかに消えてしまう・・・。
この出発点のズレが、リニューアルの失敗を生む根本的な原因だと私は考えています。
「納期が目標」になった瞬間、プロジェクトはずれ始める
納期を守ることと、成果を出すことは、まったく別の話です。
制作の世界で働いていると、どうしても「納期」が最優先になります。これは仕方のないことで、制作会社はスケジュールを守ることでビジネスが成り立っているからです。
だから「いつまでに完成させるか」が自然と話題の中心になっていく。悪意があるわけではありません。でも、頭の中では、「作ること」が目的になってしまいがちです。
私が怖いと思うのは、クライアント側もいつの間にか「完成させること」を目標にしてしまうことです。「今月末までに公開できればOK」という感覚になっていく。でも、公開日はゴールではありません。むしろ、そこからが本番なのです。
プロデュースという視点で入ると、最初に決めることが変わります。
まず目標を設定する。「半年後にどんな成果を出しておきたいのか」を、できるだけ具体的に言葉にしていく。
その目標から逆算して、「では、どんなホームページや、どれくらいの広告費が必要か」を考えます。完成日ではなく、結果のシミュレーションを先に行う。そういう順番で物事を進めていきます。
クライアントと「目標」を決めることから始める
目標が曖昧なままプロジェクトを始めると、判断の軸がなくなります。
「こっちのデザインとこれでは、どちらがいいですか」という場面を想像してみてください。目標が明確なら、「どちらが問い合わせしたくなるか」というユーザー視点で判断できます。
でも目標がなければ、好みや雰囲気で決めるしかなくなります。そしてそういうプロジェクトは、たいてい「なんとなくかっこよく作られたホームページ」で終わります。
私がクライアントと目標を設定するとき、必ず数字を出すようにしています。売上をいくらにしたいか。広告費を引いたらどれぐらい利益が残るのか。
20年前は、こういう話をすると戸惑われることもありました。単なる制作業者だと思っている人からは「ホームページの話じゃなかったの?」とも言われました。
でも、ここを避けると、後でかならず「全然問い合わせがこない」とクレームになります。
初回ヒアリングで「納期」を聞かない理由
制作会社であれば、初回の打ち合わせで必ず「納期はいつですか」「予算はどれくらいですか」と確認します。
当然の質問です。でも私の場合、最初にそれは聞きません。正直に言うと、あまり興味がないのかもしれない。
私が最初に聞くのは、「何を実現したいか」です。「どうなりたいか」と言い換えてもいいのですが、できれば、その答えを数字で教えてほしいとお願いします。
「なんとなく問い合わせが増えれば」ではなく、「月に何件の問い合わせがあれば、どのくらいの売上になるのか」を一緒に考えます。
これはリニューアルというよりビジネスの話です。ホームページはその手段に過ぎません。売上や粗利の目標から逆算して、「必要な問い合わせ件数」が決まり、「そのための集客戦略」が決まり、「そのためのホームページ設計」が決まる。この順番で考えると、何を作るべきかが自然に見えてきます。
納期の話は、その後でいい。何を作るかが決まれば、どれくらいかかるかも見えてきます。
「お客様の視点」に切り替えると、見える景色が変わる
プロデュースとは、クライアントではなく、クライアントのお客様の視点で考えることです。
これは、私がプロデュースという仕事で一番大事にしていることかもしれません。制作会社の立場だと、どうしてもクライアントの要望に応えることが仕事になります。でもプロデューサーの立場だと、クライアントの要望の「その先」にいるお客様のことを考えなければいけなくなります。
たとえば、クライアントが「うちの技術力を前面に押し出したホームページにしたい」と言ったとします。制作会社なら、その方向で進めるでしょう。でも私は、少し立ち止まって聞きます。「そのホームページを見たお客様は、何を感じるでしょうか」。
技術力をアピールしたい気持ちはわかる。でも、そのホームページを訪れるお客様が最初に持っている疑問は「この会社に頼んで、自分が抱える問題は解決できるのか」ではないでしょうか。技術力の説明が長くても、その問いに答えていなければ、お客様は見てくれません。
この「違和感」を感じる感覚が、プロデュースという仕事の核心だと思っています。「何かがおかしい」と感じる直感。それはたいてい、「作り手の論理」と「お客様の気持ち」がずれているときに起きます。そのズレを、外から客観的に指摘できる立場が、プロデューサーだと私は考えています。
「任せれば安心」でも「全部指示」でも、失敗する
ホームページリニューアルの失敗は、たいてい関わり方の違いから生まれます。
一つは「制作会社に丸投げ」。「プロに任せたから大丈夫」という安心感で、ほとんどお任せで進める。完成したホームページを見て「なんか違う」と感じるけれど、どこがどう違うのかも説明できないのでそのまま公開する。そういうケースは珍しくありません。
もう一つは「細かく自分で指示する」パターン。経営者や担当者が強いこだわりを持っていて、デザインから文言まで細かく指示する。制作側は言われた通りに作るしかない。できあがるのは「自分好みのホームページ」で、お客様の視点が抜け落ちたいわゆる自己満足の作品になりやすい。
どちらも、結果が出ない理由は同じです。「どんなホームページであれば結果が出るか」を、客観的に考える人間がプロジェクトの中にいない事です。
これは私の考えですが、リニューアルのプロジェクトには、クライアントと制作会社の間に立つ「第三者の視点」が必要だと思っています。
クライアントの事業目標を理解しながら、お客様の立場に立って、「結果が出るホームページ」を設計できる人間。それがプロデューサーという役割であり、私が20年以上、制作より先にここに力を入れてきた理由です。
ホームページは「完成」がゴールではない
プロデュースとは、結果に責任を持つ視点で関わることです。
制作会社に全部任せることも、自分の好みで全部決めることも、どちらも「完成」をゴールにしてしまってます。
でも、ホームページが公開されてからが本当のスタートなはずです。アクセスは増えるか、問い合わせは増えるか、問い合わせから受注につながるか。すべての答えは、公開後にしか分かりません。
だからこそ、プロジェクトの最初に「何を目指しているか」を決めることが大事になります。目標があれば、完成後も「結果が出ているか」を一緒に確認できます。うまくいっていなければ、どこを修正すればいいかも見えやすいはずです。
「任せれば安心」という言葉は、制作の世界ではある意味正しい。でも、ビジネスの結果という意味では、安心できる根拠には全然なっていません。
ホームページを「制作物」ではなく「ビジネスツール」として捉え直すこと。プロデュースの視点での切り替えが、リニューアルを成功に近づける第一歩だと私は思っています。

