
ホームページをリニューアルすれば問い合わせが増えると思っている人は多いものです。でも、見た目が変わっただけではあまり問い合わせ数は変わりません。
原因のひとつとして、”書いてあること”と”現場でやっていること”の温度感のズレがあります。
そしてAIが普及した今、そのズレはかつてより早く、広く、静かに伝わっていく時代になっているようにも感じます。
リニューアルしても問い合わせが増えない会社に共通していること
ホームページをリニューアルしても成果が変わらない。その根本的な原因は、ほとんどの場合「デザイン」ではなく「中身」にあり、細かいところで言うと「現場との乖離」だったりします。
たとえば、ある機械部品の製造会社が、ホームページをリニューアルしました。デザインは今っぽい感じでかっこよくなり、会社の特徴も整理されて、「お客様の課題を一緒に解決します」「小ロットにも柔軟に対応」「スピード対応が強み」といった言葉が並びました。担当者の方も「これで問い合わせが増えるはずだ」と期待していたそうです。
でも、リニューアルから半年が経っても、問い合わせ数はほぼ変わりませんでした。いや、むしろ手作りで作成したホームページより減ってました。
詳しく話を聞いていくと、少しずつ原因が見えてきました。実際には、小ロット案件は営業が後回しにしていたことがわかりました。また、スピード対応といっても、実際は見積もりに3日かかっていることもありました。Googleの口コミには「対応が遅い」というコメントが残ったままです。
ホームページに書いてある事と、現場の実態とは別の会社のように感じられました。
これが、温度感のズレです。そこを変えないまま、見た目を整えても、中身が一致していなければ、見る人はなんとなくの違和感を感じるものです。むしろ、きれいになった分だけ「なんか違う」という違和感が増してしまうこともあります。
AIは「会社の普段」を静かに照合している
また、AIは、会社の発信内容だけを見ているわけではありません。会社名を軸に口コミ・SNS・採用ページ・社員の投稿・レビューサイトを横断的に参照し、一致していない情報を信頼性の低いものとして処理します。
ChatGPTやPerplexityといったAIに「○○市でおすすめの△△会社」と質問したとき、AIは何を根拠に会社を選んでいると思いますか?
ホームページだけを見ているわけではありません。Googleレビュー、SNSの発信、採用サイトの記述、業界メディアへの掲載、取引先のブログでの言及……そういったものを横断的に参照して、その会社の信頼性を判断しています。
つまり、ホームページで「丁寧な対応」と自ら書いていても、Googleレビューに「返信が来なかった」という口コミが多ければ、AIはそれを矛盾した情報として処理します。採用サイトでは「風通しの良い職場」と書いているのに、社員の匿名投稿サイトに「上からの指示が多い」と書かれていれば、それもズレとして認識されます。
余談ですが、これはAIが意地悪をしているわけではなく、むしろ人間が直感でやっていることをAIが代わりにやっているだけです。私たちも、初めて取引先を選ぶとき、ホームページだけじゃなくて口コミを見たり、SNSを確認したりします。AIはそれを大量に、素早くやっているだけです。
だから、ホームページだけ整えても、周辺情報との一致がなければ、AIには「信頼できない会社」として扱われてしまう可能性があるのです。
“一致”している会社は、何が違うのか
温度感の一致している会社は、発信の量より「言っていることとやっていることの整合性」を大切にしています。
少し前、地方の注文住宅外車の経営者の方と話す機会がありました。ホームページには「プロとしておすすめできないことはやらない」というフレーズが堂々と書かれていました。
それは本当のことで、実際に断ることも多いし、施工事例も「要望の仕様をこう提案して変えてもらった」と書いている回もありました。
そのようにリニューアルしてから来る問い合わせの質が高くなった、「最初から信頼してくれているお客様が多い」と経営者の方が言っていました。
これがまさに温度感が一致してる状態です。派手な言葉ではなく、現場でやっていることをそのまま発信している。だからこそ、読んだ人が「この会社、ちゃんとしてるな」と感じる。
逆に言うと、ホームページに「丁寧な対応」「スピード」「柔軟性」といったうわべだけの言葉を並べている会社の多くは、実態との差を確認しないまま言葉を並べているだけです。それは言葉が悪いのではなく、現場との照合を怠っているだけなんですが、結果的に信頼を損なうことになります。
これは私の考えですが、中小企業のホームページに必要なのは「いいことを書く力」より「現場を正直に見せる勇気」だと思っています。
ホームページを”一致”させるための最初の問い
まず「ホームページに書いてある約束」と「現場が実際にやっていること」を並べてみましょう。ズレが見えたとき、直すべきはホームページより先に現場対応かもしれません。
具体的に、こういう問いから始めてみてください。
「自社のホームページに書いてある強みや約束を、現場の担当者に見せたとき、全員が『当たり前』と思えるか。」
これが意外と一致しない会社が多いです。経営者や広報が書いた文章を、営業や現場の社員が初めて見て「こんなこと書いてたの?」となるケースも実際にあります。
そうなると、ホームページが”会社の顔”ではなく”経営者の外面”になってしまいます。お客様には理想が伝わりますが、現場の温度感がないから、実際に接触したときにギャップが生まれる。そのギャップが、じわじわと信頼を落としていきます。
改善のステップとしては、まず社内で「ホームページに書いていること」と「現場で実際にやっていること」を並べて比較する作業をやってみてください。一致しているところは自信を持って掘り下げて発信する。一致していないところは、現場を変えるか、表現を正直にするか、どちらかを選びましょう。
重要なのは、「ホームページをカッコよく見せる」のではなく「現場の温度感をちゃんと伝えるホームページにする」という順序の違いです。前者は言葉の問題、後者は姿勢の問題と言えます。
AI時代に”一致”が武器になる理由
AIを使えば表面的な情報は誰でも作れる時代になりました。だからこそ、地道に現場と発信する情報を一致させてきた会社が、AIにも選ばれ、信頼され、問い合わせを獲得していきます。
AIによって、文章もデザインもキャッチコピーも、誰でも簡単に作れるようになったからこそ、「それっぽいホームページ」を作るだけなら、今はさほど難しくない時代です。
だからこそ、「この会社、本当にそうなの?」という目線が、以前より鋭くなっています。
AI検索において、複数の情報源を横断して一貫したメッセージを発信している会社は、そうでない会社より高い信頼スコアを得やすいと言われています。これはSEOの話ではなく、もっと根本的な話で、「情報に一貫性があるかどうか」がAIに信頼できる発信元かどうかを判断する基準になっているということです。
これまで20年以上、様々な業種のホームページに関わってきましたが、長期的に問い合わせが安定している会社には共通点があります。派手な言葉は使っていないけれど、ホームページと現場と発信のトーンがちゃんと一致している。
これは、一朝一夕でできることではありませんし、継続した情報発信を積み上げていく必要があります。

「うまく見せる」から「ちゃんと温度感を一致させる」ことがAI時代の最初の一歩になります。

