
AIやノーコードツールの普及で、見た目の整ったサイトは誰でも作れる時代になりました。
ただ最近は自分たちでノーコードツールを使ってサイトを作った方から「成果が出ない」という相談をいただく事も増えてきました。
サイトを見せてもらうと、確かにデザインは全体的に整っていて、ぱっと見た感じ悪くありません。
実はこの「デザインはきれいなのに成果が出ないサイト」問題は、ノーコードツールやAIが登場する前から存在していました。今はきれいなサイトを作りやすくなった増えた分、その問題がより広がっている印象です。
「作る」のハードルが下がった時代に何が起きているか
Web制作の歴史を振り返ってみると、20年以上前、私がこの仕事を始めた頃は、HTMLをテキストエディタで手書きするのが当たり前でした。
Dreamweaverのようなオーサリングソフトが登場して作業効率が上がり、Movable TypeやWordPressなどのCMSも普及して、数百ページある大規模なサイトも制作しやすくなりました。ここ数年はWixやSTUDIOのようなノーコードツールが登場し、HTMLの知識がなくてもサイトを作れるようになりました。
さらに最近では、AIに指示するだけでサイトが生成される時代が、すでに始まっています。作るだけなら簡単になった事は事実だと思います。
でも、ツールの進化は「作りやすくなった」だけで、「成果を出しやすくなった」わけではありません。むしろ、きれいなサイトを手軽に作れるようになったことで、見た目だけでは差別化できなくなってきています。
デザインはいいのに成果が出ないサイトの共通点
相談を受けたとき、私がまず確認するポイントは決まっています。ファーストビューのキャッチコピー、そして動線、最後が信頼感の伝え方です。この3点を見れば、だいたい成果が出ているかわかります。
ファーストビューのキャッチコピーが「誰にも刺さっていない」
ファーストビューとは、サイトを開いて最初に目に入る画面部分のことです。ここに置かれたキャッチコピーが、成果を左右すると言っても過言ではありません。
成果が出ていないサイトのキャッチコピーを見ると、大きく2つのパターンに分かれます。一つは「私たちは〇〇の会社です」とただ自社の事業を伝えているもの。もう一つは抽象的なイメージと共に英語のコピーが入ったパターンです。
どちらも悪意があるわけではありません。むしろ一生懸命に考えた結果そのようになったのかもしれません。でも訪問者の視点で見ると、「自分の問題を解決してくれるの?」と思ってしまうはずです。
これは私の考えですが、キャッチコピーの役割は「自社の説明をすること」ではなく、「訪問者に『これは自分の問題を解決してくれるところだ』と感じてもらうこと」だと思っています。
たとえば同じ製造業向けのBtoBサービスでも、「高品質な加工技術で貴社のものづくりを支援します」と「図面を送るだけで翌日に見積もりを提出、試作専門の加工会社」では、伝わり方が全然違います。後者は具体的で、誰に向けたサービスを提供しているのが一目で伝わります。
ノーコードツールやAIでも、キャッチコピーを「それらしく」生成することはできます。でも「誰に向けて、何を解決するのか」を決める仕事は、ツールにはできません。
動線が設計されておらず、訪問者が迷子になる
キャッチコピーが機能していたとしても、次の問題があります。「どのような流れで最終的にどういう行動をしてもらうか」という動線設計です。
訪問者がファーストビューを見て「この会社、良さそうだな」と感じたとします。その次に何をしますか? という問いに、サイトが答えられているかどうかが重要です。
成果が出ないサイトでよく見るのは、「会社概要」「サービス一覧」「お問い合わせ」という横並びのナビゲーションだけが用意されていて、訪問者に「次に何をすればいいか」が伝わっていないケース。訪問者は迷子になって、結局離脱していきます。
余談ですが、私はサイトを診断するとき、「初めてこのサイトを訪れた、自社の商品やサービスを何も知らない人」になりきって見るようにしています。専門知識なし、業界の慣習なし、その会社への事前の情報なし。その状態でサイトを見たとき、自然に問い合わせという行動に辿り着けるか。
これを意識して設計されているサイトとそうでないサイトは、見た目のデザインとは無関係に、成果が大きく変わります。
「信頼できる会社か」という問いに答えられていない
最後の問題は、信頼感の担保です。
これが一番見落とされやすいポイントだと思っています。訪問者は問い合わせという行動を起こす直前に、必ずといっていいほど「この会社に相談して、大丈夫かな」と考えます。特にBtoBの場合、問い合わせ先は担当者が責任を持つ部分です。変な会社に連絡して失敗したくないという心理が働きます。
では何が信頼を担保するのかというと、実績や事例、担当者の経歴、会社の理念、そして一番大事なのが「なぜこの事業をやっているのか」というストーリーです。これらのコンテンツがしっかり用意されているかどうかです。
ノーコードツールで作られたサイトは、テンプレートが整っているので見た目は安心感があります。でも中身を見るとそれっぽいイメージ写真が一枚だけだったり、実績は「累計〇〇件」という数字だけで詳細がない、会社情報も最低限というケースも多いものです。
訪問者は、見た目(デザイン)ではなく、内面(コンテンツ)で信頼するか判断します。どれだけきれいなサイトでも、この内側の情報が薄ければ、問い合わせには至りません。
AIが「作る」を担う時代、専門家の仕事はどこにシフトするか
専門家の価値は、制作の実作業からシフトし、「何を作るか」「誰に届けるか」を設計する戦略立案に集中するようになっていくと思います。
私たちは「Web制作会社」ではなく「プロデュース会社」だと常々言っていますが、サイトを作ることが目的ではなく、クライアントのビジネスに成果をもたらすことが目的だから、というのが理由でした。でも最近は、このプロデューサー的な立ち位置がより鮮明に求められるようになってきたと感じています。
以前は「きれいなサイトを作る」人に一定の価値がありました。そのような制作スキルを持つ人間が限られていたからです。でも今は、見た目の整ったサイトはツールで誰でも作れる時代です。
そうなると「きれいなサイトを作れる」というスキルの価値は相対的に下がり、「成果を出せる」という価値が際立ってきます。
成果を出すためには、まず問題を正確に把握しなければなりません。「なぜ今のサイトが機能していないのか」「訪問者はどこで離脱しているのか」「ターゲットは本当にこれで合っているのか」こういった問いに答え、仮説を立て、優先順位をつけてPDCAを回していく仕事です。
この問題発見と戦略設計こそが、ツールでは代替できない専門家の仕事だと思っています。(そのうち代替されるかもしれませんが・・・)
むしろ、AIやノーコードツールが「作る」を担ってくれるようになった今、私たちは「考える」ことに集中できるようになったとも言えます。
私は、これはポジティブな変化だと感じています。制作の細かい作業に時間を取られていた分が、クライアントとの戦略対話に使えるようになってきたからです。
きれいなサイトを作ることと、成果を出すことは別の話
ツールの進化を歓迎しながら、コミュニケーション設計の本質を手放さないことが、これからのWeb制作の仕事に求められる姿勢だと思っています。

Webサイトはあくまで、訪問者とのコミュニケーションツールだからです。
誰に、何を、どう伝えるか。この問いに対する答えは、ツールがどれだけ進化しても、人間が考えなければならない部分がほとんどです。
「デザインはいいのに成果が出ない」のは、ツールの問題ではなく、戦略の問題だと思います。きれいなサイトを作った先に、「このサイトは誰のために、何のために存在しているのか」という根本を問い直す作業が必要だからです。
これから、ノーコードやAIを使えば誰でもサイトを作れる時代はさらに加速していくでしょう。見た目がきれいなサイトはもっと増えていくからこそ、成果を出せるサイトと出せないサイトの差は、これまで以上に広がっていくのではと感じています。

