海浜タワーとしては日本一の高さを誇る福岡タワー。
地上123mにある最上階の展望室から、福岡の街並みや博多湾の景色を360度の大パノラマで一望できる人気の観光スポットです。
私たちは、2011年から福岡タワー様のホームページリニューアルやWebマーケティングをサポートさせていただいております。
2011年11月に最初のリニューアルを行い、2019年6月に「海と空が出会う場所」という新しいコンセプトに合わせて2度目のフルリニューアルを行いました。
前回と今回、どのような考え方でホームページのリニューアルを行ったのかご紹介させていただきます。
【2011年のリニューアル】「知っている」から「行ってみたい」へ
福岡タワー様とのご縁は2011年7月にホームページリニューアルのコンペにお声がけいただいたのがきっかけです。
お声がけいただいた理由として、ご担当者の方がコンペへの参加企業を探していた時に成果報酬をうたっている会社は当社だけで提案を聞いてみたかったからと後日お聞きしました。
コンペでの詳しいプレゼンテーション内容は省略しますが、ありがたいことに私たちの提案が採択されました。
福岡のシンボルタワーとして抜群の知名度を誇る福岡タワーですが、その当時のホームページでは様々な課題を抱えておられました。
- 福岡タワーのイメージを訴求できていない
- アクセス数が減少傾向にある
- ホームページを集客ツールとして十分に活用しきれていない
これまでも何度かホームページのリニューアルはされていましたが、 情報が整理されておらず、ユーザーが使いづらいホームページになっていました。
また、 その当時のホームページ制作会社も作ったら終わりという感じで、改善提案もなかったと言われてました。
そこで私たちは、ホームページリニューアルにあたり、ユーザー視点でシンプルな仮説を2つ立てました。これはネットにあまり詳しくない経営者層にも、課題をわかりやすく理解していただくためです。
2011年当時のホームページの課題と改善
ワクワク感の不足
お客様は自分が福岡タワー(シーサイドももちエリア)に遊びに行った時のことを思い浮かべながら
「どんな楽しい時間をすごせそうか?」
「思い出に残る旅行やデートになるんだろうか?」
など自分が実際に福岡タワーにいるようなイメージをしながら、 “楽しむために必要な情報”を知りたいからホームページを見に来ているのです。
その時に、福岡タワーに行ってみたいと思えるような、“わくわくするコンテンツ”があれば、福岡タワーへの来館者をもっと増やせるのではないかと考えました。
「知っている」で終わっている
福岡の人たちにとって福岡タワーの存在は当たり前になりすぎていてあまり興味をもてない存在になっているのではないかと感じていました。
「知っている」ではなく「実際に行ってみたい」と思っていただけるような、強いフックがもっと必要なのではないか?
実はこれらの仮説はコンペの提案前に、家族で福岡タワーへ視察へ行った時に思いついたことです。やはり現場を見ることは大切で、様々な改善のヒントが現場には落ちていました。(この視察レポートはコンペ時に提出しました)
今回のリニューアルにあたり、全国の観光タワーのホームページは全てベンチマークとしてチェックしている時に、本当のライバルはテーマパークなのではないかとふと思いました。
お客様の大切な休日を奪い合うという意味で強力なライバルになるからです。
そこで、ディズニーランドや美ら海水族館、ハウステンボスなど有名なテーマパークのホームページを全てチェックした上で、ひとりのユーザーとして感じた事を全て洗い出し、スタッフとブレストしました。
これらの仮説や分析を通して、今回のホームページリニューアルで福岡タワーの“本質的な魅力”を伝え、実際行ってみたいと思う人を少しでも増やすことができれば、「展望客数の増加」という目的達成は可能だと確信しました。
そしてこのようなデザインとコンセプトを提案しました。
2011年当時に提案したデザインとコンセプト
展望室から望む“大パノラマの感動”を伝えることで“興味とインパクト”を与える
展望室からの迫力あるパノラマ写真をゆっくり360度回転させて見せることで、実際に展望室から見れる感動を少しでも伝え興味を持っていただく。
洗練された外観デザインの美しさや上空へと伸びるスケール感を表現
日本一の海浜タワーとしての風格を伝える外観写真をトップページの中央に大きく用いることでスケール感を出し、「実際に自分の目で見てみたい」という欲求へとつなげる。
お客様の目的に合わせたナビゲーション設計
アクセス解析の結果、以前のホームページでは「アクセス」「フロアガイド」などの閲覧者が多かったため、これらをわかりやすい位置に入れ、その他の様々な情報を「目的別」や「お得な情報」などに整理することで、ユーザーの目的に合わせた動線設計を行う。
※ちなみにこの改善を行ったことで直帰率はかなり下がりました。
昼だけではなく夜の福岡タワーの魅力も伝え、幅広い層に興味を持っていただく
昼の福岡タワーの風景はよく知られてますが、あまり夜の魅力は発信できてませんでした。そこで夜の時間帯にホームページにアクセスした場合、夜の福岡タワーバージョンのトップページにシステムで切り替わるようにしました。若者だけでなく大人も福岡タワーを楽しんで欲しいというシーン提案のひとつとなります。
これらのコンセプトを反映した新しいホームページはお客様からの評価も上々で、リニューアル後は展望者数やアクセス数も増えました。
また、作って終わりではなく公開後をPDCAを回したことで、当初の目標は初年度にクリアすることも出来ました。
【2019年のリニューアル】新コンセプト「海と空が出会う場所」に合わせたリブランディング
2度目のフルリニューアルは、2019年の開業30周年のタイミングで行いました。
施設リニューアルとともに、VI(ビジュアル・アイデンティティ)なども一新されたからです。(※当社でVIは担当してません)
新コンセプトである「海と空が出会う場所」に合わせて、ホームページも海辺の爽やかさや開放感が感じられるデザインをご提案しました。
今回のリニューアルの仮説も前回同様に、福岡タワーに行けば「どんな楽しい時間をすごせるのか?」「思い出に残る旅行やデートになるんだろうか?」とわくわくしながらイメージしていただけるような様々な工夫を行いました。
今回のホームページリニューアルのポイント
ターゲットユーザーに近いモデルで親近感を演出
ターゲットユーザーに近い年代のモデルさんに実際に福岡タワーを楽しんでいただいて、その自然に楽しんでいる感じを動画や写真で撮影しました。
あえて男女カップルの組み合わせにせずに、仲良し女性二人組という設定にした理由としまして、最近は同性同士で遊びに来るグループが増えていると現場でお聞きし、今後そのようなパターンのお客様は増えるであろうと思ったからです。
また、館内紹介ページなども、これまでは施設説明のブツ撮り写真を使用していましたが、 モデルさんを入れることで見た人が自分と置き換えてイメージしやすいようになりました。
情報整理を行い動線設計
福岡タワーのような大規模な施設はコンテンツ量が多く、動線も複雑になりがちです。そこで実際のアクセス情報を解析し、ナビゲーションメニューの優先順位付けを行いました。
そこで ニーズが少ないコンテンツへの動線はバッサリ切り落としてシンプルにすることをご提案しました。
(社内調整など大変な面もありましたがエビデンスを付けて丁寧に説明を行い、最終的にはご理解いただけました)
ユーザーテストを行った際も「メニューの内容がよく整理されていてほしい情報に簡単にたどり着ける」「福岡に行くことがあれば立ち寄ってみたい」という嬉しいお声をいただいております。
イルミネーションを集客の目玉に
福岡の方に
「知っている」ではなく「実際に行ってみたい」と思っていただくためにイルミネーションを軸とした集客施策にも取り組みました。
毎日のライトアップスケジュールをクライアント側で更新できるようにシステム化を行うとともに、1日1組で好きな色に福岡タワーをライトアップできる「カラーイルミネーション」「ハートイルミネーション」というサプライズ企画も。これは、推し活などで使われる方も多く、SNSで取り上げられて爆発的な人気となりました。
効率的な改善を行うためにレスポンシブサイトへ
今回のフルリニューアルでは、これまで別々で作成していたPCサイトとスマホサイトをレスポンシブで統合しました。
2011年に最初のリニューアルを行った当時は、スマートフォンがそこまで普及しておらず、パソコンユーザーの割合が高かったのもあり、パソコンサイトがメインでした。スマホサイトは簡易的なものでしたが、現在ではスマホからの閲覧ユーザーが8割以上を占めるまでになってます。
PCサイトとスマホサイトを別々に更新・改善をしていくのも非効率であり、 スマホでの見やすさを考慮したモバイルファーストの考え方でUI設計やレイアウトを行うことがベストだという判断となりました。
長年PCサイトとスマホサイトを別々に運用していた場合、レシポンシブになることでスマホサイトがなくなり、大幅にアクセス数が減るケースもあります。そこで今回は細かい転送設定を行い、大きなアクセス数の落ち込みも回避しました。
福岡タワーを知ってもらうきっかけをつくるためのコンテンツSEO
今回のリニューアルでは、新たにコンテンツSEOにも取り組みました。
福岡タワーのような施設紹介のホームページの場合、館内の情報だけでは、どうしてもページ数を定期的に増やすことが難しく、コンテンツが増えないことでアクセス数が頭打ちになってしまいがちです。
そこで、「FUKUOKAアテンダント」というブログを作り、普段は館内案内をされているアテンダントさんと、福岡タワーの公式ゆるキャラであるフータが、福岡タワーや周辺の観光スポットを紹介するコーナーを作りました。
このようなブログ更新をクライアント側だけにまかせる場合はリソース的に対応できずに、中途半端に終わる可能性が高いものです。そこで、ライターさんが定期的に取材を行い更新する仕組みを作りました。
また、ユーザー視点で記事作成を行わないと、ただ自己満足的にページを増やすだけになってしまいます。これでは実際のアクセス数の増加につながりません。
全く見込み顧客にならないようなユーザーを集客しても意味がありませんので、福岡観光に興味を持って情報収集しているであろうユーザーに福岡タワーのことをまずは認知してもらう必要があります。
そこで、福岡観光に興味を持つ潜在層にアプローチできないかと考えました。少しでも福岡タワーに興味を持っていただければ、旅行の計画に入れてもらえるのではないかという仮説があったからです。
毎月のように周辺の観光スポットに取材に行き、福岡観光の楽しみ方を紹介するコンテンツをこつこつ増やした結果、 周辺の観光スポット名でのキーワードでの訪問ユーザーが増加し、そこから福岡タワーホームページ内を見てもらえることでPVも増加しました。
来館者数も増加しておりますので、集客施策としては成功かと思われます。
この施策はクライアント様にも「リニューアル前から比べるとアクセス数は2倍に増え、展望者数も毎年増加を続けています。」と評価をいただきました。
訪日外国人観光客を広く集客するために多言語ホームページの強化
福岡タワーには海外からのお客様もたくさんお越しになります。
福岡という場所柄、韓国や中国などからのお客様が比較的多かったのもあり、これまでの多言語ホームページは英語・韓国語・簡体中文・繁体中文の4言語のみで必要最低限のページを人の手で翻訳していました。
近年、韓国や中国以外のタイやベトナムなど様々な国からの訪日外国人観光客が増える中で、この仕組みではインバウンド客の取りこぼしが大きいと考え、自動翻訳ツールによるホームページ全体の多言語化をご提案しました。
以前は、自動翻訳ツールの翻訳精度が低かったのもあり導入を見送っておりましたが、最近は翻訳精度は上がってきており、コスト面や柔軟性も考慮してツール選定を行いました。
ただ、自動翻訳ツールの精度が上がったと言えど、どうしても誤翻訳はあります。そこで、 重要な情報が掲載されているページを中心にネイティブの方にチェックしていただき修正する体制も作りました。
海外にお住まいの翻訳者の方に管理画面から翻訳後のサイトプレビュー画面を見ながら直感的にテキスト編集や画像置換が行える機能を使ってリモートで校正作業を行っていただいております。
また、テキスト部分は自動翻訳されますが、画像は日本語のままだとおかしいので、重要なページの画像も全て翻訳を行いました。特にアクセスマップのような海外からのお客様も見るであろう重要な画像が日本語のままだと離脱につながります。
ホームページ全体の多言語化を行ったことで、海外から検索エンジン経由での訪問者数も増えており、実際のインバウンドのお客様も増加傾向です。
現在は英語, 韓国語, 中国語(簡体), 中国語(繁体), タイ語の5言語に対応してますが、今後はさらに言語を追加していく予定です。
これからもホームページで成果を出し続けるために
気がついたら10年以上、福岡タワー様のWebマーケティングのお手伝いをさせていただいております。
もともと私は福岡が地元ではありませんので、福岡タワー様という福岡を代表する観光施設のリニューアルコンペにお声がけいただき、最初はどのようにお役に立てるのかがよくわからずお断りしたほうがいいのか悩みました。
ただ、私がこれまでECサイトやBtoB サイトを中心として蓄積してきた企画力・集客ノウハウがわずかながらでも貢献できるのではないかと考え、ご提案させていただいた企画が評価され嬉しかったのを昨日のように思い出します。
ただ、ホームページ制作会社にリニューアルを頼めば、勝手に成果を出してもらえると思っている方もいますが、そんな甘い考えでは絶対うまくいきません。
成果を出すためには、ホームページに関心を持ち続けることがとても大事です。
リニューアルの時のデザインにはこだわって口を出すけど、完成したら興味をなくす方もよくいますが、関心を持ち続けることが大切なのです。
そういう意味では、福岡タワー様のご担当の方とは、実際のお客様がどのような交通手段で福岡タワーまで来ているのか調査するために、博多駅や天神の観光案内所へヒアリングに行き、そこで得た情報をホームページ改善に活用したこともあります。
「展望客数の増加」という目標に向けて、福岡タワー様と私たちが協力し合ってPDCAを回し続けていることが成果を出せている理由だと思います。
成果を出すことで、クライアント様に喜んでいただくことが何より仕事のやりがいを感じますので、さらなる魅力的なコンテンツの企画や見せ方など、福岡タワーの展望者をさらに増やせるような施策を考え実行していくのが私たちの仕事だと考えています。