
マーケティングや営業活動において 「誰に対して自社の製品やサービスを提供するのか」 を明確にすることは非常に重要です。
しかし、多くのBtoB企業ではこの「誰に」の部分が曖昧なままWebサイトやLPを作成してしまい、思うような成果が出ていません。
特に 人手不足の中小企業 では、そもそもマーケティングの概念が浸透しておらず、「自分たちが伝えたいこと」を一方的に発信するだけで、顧客視点が欠けた自己満足型のWebサイト になってしまうケースも少なくありません。
そこで重要になるのが 「ペルソナ設定」 です。
ペルソナを作ることで 理想的な顧客像が明確になり、ターゲットに響くコンテンツや訴求ができるようになります。その結果、WebサイトやLPの成約率向上やリード獲得につながります。
今回は、BtoB企業向けに 成果につながるペルソナの作り方をご紹介します。
BtoBにおけるペルソナ設定の重要性

飛び込み営業で無計画に訪問を繰り返しても、成果はなかなか出ませんよね。 一方で、成果を上げる営業マンは、事前に「見込みがありそうな顧客」をイメージし、計画的にアプローチしているものです。
これは WebサイトやLP制作でも同じです。
作る前に「どのような顧客が成約しそうか」をしっかり設計することで、成果につながりやすくなります。そのために欠かせないのが 「ペルソナ設定」 です。
ターゲットとペルソナの違い
「ペルソナ」とは、自社の製品やサービスを利用する理想的な顧客像を具体化したもの です。
よく「それってターゲットのことでは?」と混同されがちですが、ペルソナとターゲットは異なる概念 です。
ターゲット
ターゲットはエリアや業種などの大まかな属性で区分したものです。
例えば、「関東」にある「従業員100名規模」の「製造業」といった感じがターゲットにあたります。
ペルソナ
ペルソナはターゲットをさらに掘り下げ、実在する人物のように詳細に具体化したものです。
例えば、「千葉県の従業員200名ほどの機械部品工場で、設備担当をしている工場長の山田太郎さん(52歳)」のような感じでひとりのユーザーにします。

さらに、年齢や役職だけでなく、悩みや行動パターン、よく使う情報源 などまで想像し、リアルな人物像に落とし込む ことで、より具体的な施策設計が可能になります。
ペルソナ設定で得られる3つのメリット
① 顧客の行動や心理が想像しやすくなる
ターゲット設定では顧客像がぼんやりしてしまい、行動パターンまでイメージしにくいことが多いです。
しかし、ペルソナでは「この人ならこう考えるだろう」と具体的に想像できる ため、コンテンツや広告の精度が高まります。
② スタッフ間で共通認識が持てる
ターゲット設定だけだと人によって解釈がバラつきますが、ペルソナを共有することで認識のズレが小さくなります。
例えば、「山田さんなら、このページでコスト削減の事例を知りたいよね」といった具体的な会話ができるため、施策の方向性がブレにくくなります。
③ BtoBにおける複数部門間での連携がスムーズになる
BtoBでは、成約までに関わる部署や担当者が複数にまたがることが一般的です。
経営者や意思決定者、マーケティング担当者、営業チームなどが共通のペルソナを認識していると、一貫性のある施策を展開しやすくなります。
BtoBでのペルソナ作成の流れと活用法
BtoC向けのペルソナ作成法は多く紹介されていますが、BtoBに特化した情報はまだ少ない 印象です。
BtoCとBtoBではペルソナの作り方が少し違いますので、BtoBにおけるペルソナ設計と活用法についてご紹介します。
1. 既存の取引先のデータを収集する
まずは、現在取引のある顧客データを収集しましょう。
どのような業種や企業規模(従業員数・売上規模など)の取引先が多いのかを把握することが第一歩です。さらに、問い合わせの「きっかけ」や解決した課題も必ず記録しておきましょう。
例えば、以下のような情報を整理します。
- 業界:機械部品メーカー(製造業)
- 企業規模:従業員200名、売上5億円規模
- 課題:生産効率の向上、コスト削減
- 問い合わせのきっかけ:展示会で自動化システムに興味を持った
このように「どんな顧客が、何を求めて、どこから問い合わせてきたか」を整理することで、理想的な取引先像が見えてきます。
2. 理想的な取引先を明確にする
既存の取引先を分析すると、多くの場合 「パレートの法則」に当てはまります。
つまり、上位20%の顧客が売上の80%を生み出しているケースが多いのです。
この上位20%の顧客を分析し、自社にとって価値のある顧客像を明確にしましょう。
具体的な手順は以下の通りです。
- 1. 取引先をグループ分け(業種、規模、LTVなど)
- 2. 売上や取引期間を考慮して理想顧客を選定
- 3. 理想顧客の特徴をペルソナ化
3. 担当者の人物像まで具体化する
ペルソナをイメージしやすくするために、理想的な取引先の担当者はどんな人なのかも具体化します。BtoBでは、意思決定者と実務担当者が異なるケースが多い ため、それぞれのペルソナを作成しましょう。
意思決定者 | 情報収集担当者 | |
役職 | 経営者 | 工場長 |
年齢 | 60代 | 50代 |
関心事 | コスト削減、投資対効果 | 業務効率化、導入事例 |
影響を受ける情報 | 業界紙、展示会 | ネット記事、ホワイトペーパー |
どこで情報収集するか | 人脈、業界誌 | Google検索、YouTube |
さらに、名前や写真を用意することで、チーム内でイメージを共有しやすくなります。
ネットでそれっぽい画像を探して、「これが理想のペルソナ像だね」と話せるようにすると、スタッフ間で共通認識が持てる ようになります。
【参考】生成AIでペルソナ作成を効率化する
「ペルソナ設計が難しい」「言語化しにくい」 という場合は、生成AIを活用してみましょう。
たとえば、無料ツールの 「Insight Journey」 を使えば、簡単にペルソナを生成できます。
使い方はシンプルです
- 「◯◯(ターゲット)が困っている」
- 「△△(課題)を解決したい」
この2点を入力するだけで、想定ペルソナと課題の背景が自動生成 されます。

生成AIで壁打ちすることで、ペルソナをブラッシュアップするのにも役立ちます。
4. 具体的な行動シナリオを作る
ペルソナを作成した後は、見込み顧客が成約に至るまでの行動シナリオを設計しましょう。「どのようなきっかけで自社を知り、どのような流れで問い合わせ・成約に至るのか」を可視化します。
行動シナリオ例
- 情報収集フェーズ:
- 担当者が「生産管理システム 導入メリット」で検索し
- 複数の製品の資料をダウンロードする
- 比較検討フェーズ:
- 気になった製品の会社のセミナーやウェビナーに参加
- 導入事例や価格・サポート体制を比較
- 意思決定フェーズ:
- 経営者が費用対効果やサポート体制を評価
- 正式に導入を決定
5. ペルソナに基づいた施策を展開する
作成したペルソナをもとに、具体的なマーケティング施策や営業戦略を設計します。
施策例
- Webサイトの改善: ペルソナが求める情報(FAQ、導入事例、比較記事)を充実させる
- 広告施策: 意思決定者向けには業界メディアへの出稿、情報収集担当者向けにはGoogle広告やマイクロソフト広告を活用
- コンテンツマーケティング: ペルソナの課題に沿ったブログ記事や動画を制作

施策は実施して終わりではなく、必ずデータを分析してブラッシュアップしましょう。
ペルソナは活用するために作るもの
私たちが現場でよく感じるのは、ペルソナを作って満足して終わってしまう会社が非常に多いということです。
しかし、ペルソナはあくまで「手段」であり、運用し続けてこそ価値を生み出すものです。ペルソナを基に施策を実行し、その効果を検証しながらPDCAを回し続けることが成果への近道となります。
BtoB企業にとってペルソナ設計は、ターゲットに響く施策を打ち出すために欠かせません。ペルソナが明確であればあるほど、リード獲得や商談率の向上といった具体的な成果につながります。
ペルソナ設計は手間がかかる作業ですが、マーケティングや営業戦略を成功させるための強力な武器になります。最初は大変かもしれませんが、ぜひ継続的に取り組んでいただきたいと思います。

BtoBのペルソナ設定でお困りの方は、壁打ち相手になりますのでお気軽にご相談ください!