
ホームページからの問い合わせが増えないという相談をいただいた時、まず「お客様は何を知りたいと思いますか?」と聞くようにしています。
この質問にちゃんと答えられる人は、正直に言うと、そう多くありません。多くの場合、ウチはこんなにすごい会社なんだと話す経営者がほとんどだからです。
ただ、その会社の中に先ほどの答えを持っている人がまったくいないかというと、そんなことはありません。むしろ、たいていいます。ちゃんといるのに、ホームページに必要な情報が載っていない。今回はその話について書きたいと思います。
お客様の不安を把握している会社は、そう多くない
ホームページリニューアルとなると、企業側はどうしても経営理念や技術力の高さばかりを語りたくなります。これは自然なことだと思います。
問題は、それがお客様の選択基準と一致しているかどうかです。会社は経営理念を語っている。けれどお客様は、まず料金の目安が知りたい。会社は創業何十年の歴史を語っている。けれどお客様は、自分と同じような状況の会社がどう解決したのか事例を見たい。会社は技術力を語っている。けれどお客様は、依頼したあとの流れや途中で起きうるリスクを知りたい。
このすれ違いが起きていると、どれだけ丁寧に作り込んだホームページでも問い合わせは増えません。デザインの問題でも文章力の問題でもなく、そもそも何を伝えるべきかを取り違えているからです。
私はこれを、問題発見力の問題だと考えています。「お客様の疑問に答えましょう」というアドバイスはよく見かけますし、正しいと思います。ただ、そのアドバイスは「疑問がわかっている」ことを前提にしており、実際つまずくのは、たいていその手前だからです。
答えは社内にある。ただし、制作現場には届かない
現場に出ている営業の方と話すと、驚くほど解像度が高いことがあります。どのタイミングで相手が慎重になるか、何と言われて断られたのか、逆に何が決め手になったか。訪問のたびに同じ質問をされるから、その質問の重さも体で分かっています。
ではその知見が、ホームページをリニューアルする時に使われるかというと、ほとんどのケースでありません。
理由はいくつかあります。まず、ある程度の規模の会社になるとリニューアルプロジェクトの窓口は広報や総務、あるいは情報システムの担当者になることが多いからです。営業部門は日々の数字を追っていて、そもそもリニューアルすることも知らされていない。もし会議に呼ばれても一度きりで、原稿確認の段階でようやく回ってくる。制作会社の側も、ヒアリングシートを一枚渡して埋めてもらうだけのような感じです。
結果として、社内でいちばん答えを持っている人が関わらないまま、ホームページが公開されます。これは制作会社が悪いという話ではなく、そういう進め方が普通になっているという話です。余談ですが、公開後に営業の方が見て「うちのお客さん、こんなこと気にしてないですけどね」とつぶやく、という場面を何度も見ています。
私が必ず営業担当に会って話をする理由
私が知りたいのは、決まらなかった案件で何が引っかかったのか、競合と比較されたときに何を見られていたのか、最終的に決めた人は誰で、その人が社内をどう説得したのか、といったことです。
商談に同席させてもらうと、資料のどのページで相手が前のめりになるかが分かります。逆に、こちらが力を入れて説明している部分が、実はほとんど聞かれていないことにも気づきます。この体感は、ヒアリングだけではなかなか得られません。
可能であれば、既に取引のあるお客様にも話を聞きます。「なぜこの製品に決めたんですか」と直接聞くと、こちらが想定していた理由とまるで違う答えが返ってくることがあります。それが分かるだけでも、載せるべきコンテンツの優先順位が変わります。
そのうえで、成約率が高そうなペルソナの仮説を立てます。ここで言うペルソナは、業種や従業員規模といった属性のことではありません。どんな状況に置かれていて、何に困っていて、何を判断材料にしようとしているのか。その状況の解像度を上げていく作業だと思っています。ホームページの構成は、そこから逆算して組み立てます。
工場向け太陽光発電のマンガLPで起きたこと
工場向けに太陽光発電を提案している会社のLPリニューアル案件の時の話です。
この会社が伝えたいのは物売りではありませんでした。工場ごとに電力の使い方も、屋根の状態も、投資回収の考え方も違う。そこを把握したうえで、その工場に合った解決策を組み立てて提案していました。つまり売っているのは設備ではなく、課題解決のほうだったんです。
これをホームページでどう伝えるか。ここが難しいところでした。スペックと価格を並べたページを作れば、比較検討はしやすくなります。でもそうすると、比較されるのはスペックや金額だけになります。この会社の強みは、まさにその手前の課題把握にあるのに、それがいちばん伝わらないと意味がありません。
そこで採用したのがマンガLPでした。営業担当の方に徹底的にヒアリングして出てきた現場の課題を、そのままストーリーにしたんです。誰がどんな状況で悩み、何につまずき、どう解決していったのか。抽象的な「お悩み解決」ではなく、実際に営業の現場で聞いてきた話を忠実に再現しました。
結果として、コンバージョン率はかなり高くなりました。ただ、それ以上に変わったのは顧客の質です。「これ、うちの工場の話じゃないか」と感じた人が問い合わせてくるので、成約率も上がったのです。
通販のように物を売るだけの商売であれば、スペックを書いて値段を問い合わせてもらえばそれでいいと思います。効率的ですし、それが正解の業種もあります。
問題は、実際には問題解決を売っているのに、ホームページが通販のようになっている会社が非常に多いということです。自社の商売の本質と、ホームページの作りがずれている。ここに気づけるかどうかは大きいと思います。
お客様が知りたいことは、あくまで仮説でしかない
ここは誤解されたくないところなのですが、営業担当に話を聞いて、商談に同席して、お客様にも取材したからといって、正解が分かるわけではありません。分かるのは、確度の高い仮説までです。
だから私は、先入観を持たないようにしています。作ったあとに、滞在時間はどうか、どのページで離脱しているか、どの経路から来た人がコンバージョンしているかを見る。読まれると思っていたページがまったく読まれていないこともありますし、補足のつもりで作ったページが最も読まれていることもあります。
正直に言うと、ペルソナの想定が微妙にずれていて、狙った層とは違う人が反応していた、ということもよく起こります。ただ、外れたと分かること自体に価値があります。それが分かればやり直せます。いちばん困るのは、当たっているのか外れているのか誰も確かめないまま数年が過ぎることです。
作りっぱなしにしないという言い方をよくしますが、少し間違っていても、そもそも一発で当たらないことを前提に設計しておく、という感覚に近いです。
PDCAを回すのが、Webプロデュース会社の仕事です
私たちはWeb制作会社ではなくプロデュース会社だと言っているのは、この違いによります。誰に何を伝えるかの仮説を立て、それを形にして、公開後の数値を見て、改善する。このPDCAを回せるかが成果を決めます。デザインの善し悪しよりも、この部分が成果へのインパクトはずっと大きいのです。
そのために、現場を知っている営業担当の方との話は大事ですし、場合によっては商談にも同席します。きれいごとではなく、そうしないと成果が出ないで自分が困るからです(笑)。
最後に、ひとつだけ確認していただきたいことがあります。御社のホームページに書かれている内容は、誰の頭の中から出てきたものか考えてみてください。会議室で決まったことなのか、それとも、お客様と実際に向き合っている人の言葉から出てきたものなのか。

もし前者だとしたら、正解はまだ社内に眠ったままかもしれません!

