
メルカリ、Airbnb、ランサーズなど、いわゆるマッチングサービスってすごく魅力的に見えますよね。在庫を持たなくていいですし、売り手と買い手を繋ぐだけで手数料が入る。
一度プラットフォームができれば、勝手に取引が成立していく。そんなイメージを持っている方も多いと思います。
正直に言うと、私自身もそう思っていた時期がありました。そして実際にマッチングサービスを立ち上げて、失敗しました。
今回は、その失敗経験を踏まえて、マッチングサービスがなぜ難しいのか、そして参入を考える前に本当に確認すべきことは何なのかをお話しします。もしあなたが今、マッチングサービスの立ち上げを検討しているなら、このページが判断材料の一つになれば幸いです。
マッチングサービスが魅力的に見える理由
マッチングサービスの魅力は、なんといってもそのビジネスモデルにあります。商品を仕入れる必要もないし、在庫を抱える必要もありません。売り手と買い手、あるいはサービスの提供者と利用者を繋ぐだけで、取引額の一部を手数料としていただける。しかもプラットフォームが成長すれば、どんどん手数料も増えていく。
こう書くと本当に理想的なビジネスモデルに思えます。実際、メルカリやAirbnbのような成功事例を見ていると「自社でも何か新しいマッチングサービスができないか」と考えたくなるのは自然なことです。
でも、ここには大きな落とし穴があります。それは「勝手に取引が成立する」という部分が、実は相当なハードルを越えた先にしか存在しないということです。
私が自社でマッチングサイトを作って失敗した話
余談ですが、実は私自身、過去にレンタル商品のマッチングサイト事業に挑戦したことがあります。「レンタルモール」という名前で、貸したい人と借りたい人をマッチングするプラットフォームを作ろうとしました。
当時はシェアリングエコノミーという言葉が注目され始めた頃で、「これからはモノを所有しない時代だ」「レンタルのニーズは絶対にある」と確信していました。市場調査もしましたし、ニーズがあることも確認できていました。
でも、結果は失敗でした。
何がダメだったのか。一番大きかったのは、レンタルビジネスそのものについての知見が圧倒的に不足していたことです。「ニーズがありそう」という表面的な分析だけで参入してしまった。レンタル業界の構造や、そこにいるプレイヤーたちがどんな課題を抱えているのか、本当の意味では理解していなかったんです。
さらに、売り手側(貸したい人)と買い手側(借りたい人)の両方を集めるコストの重さを甘く見ていました。どちらか片方だけ集まっても意味がない。両方が一定数以上いて、初めてマッチングが成立する。そのハードルは想像以上に高かったのです。
成功した事例もある—成果報酬型採用サイトのコンサル
ただ、すべてのマッチングサービスが失敗するわけではありません。私がコンサルティングを担当した成果報酬型の採用サイトは、ある程度の成果を出すことができました。
この事例で重要だったのは、すでにある程度のアクセスがあり、求職者側の集客チャネルがある程度確立されていたことです。つまり「ゼロからのスタート」ではなかったんです。そこからコンセプトを見直し、動線を改善することで、マッチング率を上げることができました。
ゼロから立ち上げるのと、すでに一定の基盤がある状態から改善するのとでは、難易度がまったく違います。この違いを理解しているかどうかが、成否を分ける大きなポイントだと思います。
マッチングサービスで失敗する3つの理由
では、具体的にマッチングサービスはなぜ失敗しやすいのか。私の経験から、主に3つの理由があると考えています。
理由1:集客のコストが2倍かかる
通常のビジネスであれば、顧客(買い手)を集めることに集中すればいいわけです。でもマッチングサービスの場合、売り手側も買い手側も、両方を大量に集める必要があります。
例えば、あなたが宿泊のマッチングサービスを作ったとして、登録されている部屋が3つしかなかったら誰も使いませんよね。逆に、部屋はたくさん登録されているのに、泊まりたい人がほとんどいなかったら、部屋を提供している側も離れていってしまいます。
つまり、両方を同時に、しかもある程度の規模まで持っていく必要がある。これが本当に大変なんです。
広告を使って集客するにしても、単純計算で2倍のコストがかかります。しかも実際には、どちらか一方が先に集まっても機能しないので、タイミングを合わせる必要もあって、さらに複雑になります。資金力がないと、ここで息切れしてしまうケースが多いです。
理由2:手数料ビジネスは意外と粗利が薄い
もう一つの落とし穴は、手数料ビジネスの収益構造です。
例えば、売り手を1,000円の広告費で集めて、買い手を5,000円の広告費で集めたとします。そして10,000円の取引が成立して、20%の手数料として2,000円をいただけたとしましょう。
この時点で4,000円の赤字です。つまり、この売り手と買い手には、少なくともあと2回は取引してもらわないと黒字になりません。
さらに厄介なのは、マッチングサービスでは価格競争が起きやすいということです。売り手側は取引を成立させたいので、価格を安めに設定しがちです。すると取引額が下がり、手数料の絶対額も減る。リピートが生まれにくい商材だと、さらに厳しくなります。
これは、製品やサービスを直接販売するビジネスと比べて、収益化までの道のりがずっと長いということを意味しています。
理由3:ビジネスドメインの知見が不足している
私のレンタルモール事業の失敗で一番痛感したのが、これです。
「ニーズがありそう」というのは、あくまで出発点でしかありません。そのビジネスドメインの構造、プレイヤーたちの利害関係、業界特有の商習慣、競合がなぜその形でサービスを提供しているのか。こういった深い理解がないまま参入すると、確実に失敗します。
特に後発で参入する場合、先行しているサービスがなぜ今の形になっているのかを理解することが重要です。それを理解せずに「もっとこうすればいいのに」と考えて参入しても、実際には見えていない制約や理由があることがほとんどです。
本当に必要かを見極める3つの視点
では、マッチングサービスを検討する際に、何を考えるべきなのか。私がコンサルティングの現場で大切にしている3つの視点をお伝えします。
視点1:自社の強みは本当にマッチングでしか活かせないか?
これが一番大事な問いかけです。
多くの場合、「マッチングサービスを作りたい」が先にあって、そこに自社の強みを当てはめようとしてしまいます。でもこれは順番が逆なんです。本来は「顧客にどんな価値を提供したいか」が先にあって、その手段としてマッチングが最適なのかを考えるべきです。
私は「問題解決力」より「問題発見力」が大事だと常々言っているのですが、ここでもそれが当てはまります。顧客が本当に困っていることは何か。それを解決する方法は、本当にマッチングサービスでなければいけないのか。もっとシンプルで効果的な方法はないのか。
こういった問いを自分に投げかけてみることが重要です。
視点2:片方(提供者側)を自社で持つ選択肢はないか?
マッチングサービスにこだわらず、普通のサービス提供ビジネスとして成立させる選択肢も検討すべきです。
例えば、オンラインの語学レッスンサービスを考えているとします。これをマッチングサービスにすると、先生側も生徒側も両方集める必要があります。でも、先生を自社で(あるいは外注として)確保して、生徒だけを集客するモデルにすれば、コスト構造はぐっとシンプルになります。
価格設定も自社でコントロールできますし、品質管理もしやすい。手数料収入だけでなく、サービス提供による粗利を確保できるので、収益化もしやすくなります。
「マッチング」という形にこだわることで、かえってビジネスを複雑にしてしまっているケースは意外と多いんです。
視点3:すでに集客チャネルを持っているか?
もしマッチングサービスを本当にやるなら、集客チャネルを持っているかどうかは決定的に重要です。
例えば、特定の業界で圧倒的なSEO上位を取れる見込みがあるとか、すでに関連する顧客基盤やメディアを持っているとか。こういった既存のアセットがあれば、広告費に依存せずに片方(あるいは両方)を集めることができます。
逆に、ゼロからすべて広告で集客しようとすると、先ほど説明した通り、資金がいくらあっても足りなくなります。
成果報酬型でWebマーケティングを提供している私たちの視点からすると、集客の見込みが立たないマッチングサービスの案件は、正直お受けできません。成果が出せないことが分かっているからです。
マッチングサービスより先に考えるべきこと
ここまで読んでいただいて、「やっぱりマッチングサービスは難しいのか」と思われたかもしれません。確かに難しいです。でも、だからといって諦める必要はありません。
大切なのは、手段を目的化しないことです。
「マッチングサービスを作る」という手段ではなく、「顧客にこのような価値を提供する」という目的を起点に考える。そうすれば、マッチングサービス以外の選択肢も見えてくるはずです。
私がコンサルティングでクライアントと話す時も、「なぜマッチングサービスなのか」「なぜリニューアルが必要なのか」を必ず聞きます。その答えによっては、マッチングではなく別の集客手段やビジネスモデルを提案することもあります。
例えば、すでに業界内でネットワークを持っているなら、マッチングサービスではなく、紹介ビジネスやコンサルティングの方が成果が出やすいかもしれません。特定の商品やサービスについて深い知見があるなら、セレクトショップ型のECサイトの方が向いているかもしれません。
マッチングサービスという形に固執せず、本当に顧客に価値を届けられる形は何かを考える。これが、私が大切にしている「問題発見力」であり、成果報酬型でビジネスをやっているからこその視点でもあります。
まとめ
マッチングサービスは魅力的なビジネスモデルですが、成功のハードルは想像以上に高いです。両面を集めるコスト、手数料ビジネスの収益構造、ビジネスドメインの知見。これらをクリアできる自信がなければ、参入は慎重に検討すべきです。
本当に考えるべきは「自社の強みは何か」「顧客にどんな価値を提供できるか」ということ。そこを起点に考えれば、マッチングサービス以外の、もっと現実的で効果的な選択肢が見えてくるはずです。
私自身、マッチングサイトで失敗した経験があるからこそ、この記事を書きました。もしあなたが今、マッチングサービスを検討しているなら、一度立ち止まって本質を考えてみてください。それが結果的に、一番の近道になると思います。

