こういうことを書くと広告代理店の人に怒られそうですが、リスティング広告の運用はAIが進化した関係で以前に比べてそこまで手間はかかりません。ただ、効率よくAIに学習させるためにはいくつかのルールがあります。
リスティング広告はAIで自動化する時代
私はGoogleアドワーズが始まった2000年からリスティング広告を使ってますが、その当時と今とでは運用方法が大きく変わっています。
当時は、1広告グループ=1キーワードのような非効率な運用が主流でしたが、 現在の広告運用のトレンドは「AIによる自動化」です。
AIが機械学習をしてターゲティングやキーワード調整などを自動で最適化してくれます。
AIの機械学習を使うメリットを少しご紹介すると
業務が効率化できる
以前のやり方であれば、競合他社より上位に表示させるために頻繁に入札単価を手動で調整する必要がありました。
1日中パソコンに張り付いて作業したい・・・、こういう非効率な作業もAIで自動化されるため改善の手間がかなり削減できるようになりました。
CPAが下がりコンバージョン数が増える
AIの機械学習によって広告運用が自動化されることによって、手動で行ったときよりもCPAが低くなっているように感じます。なので同じ広告予算でコンバージョン数を増やすことができます。
いいことずくめですね。注意することはないんですか?
自動入札を行うAIは過去のコンバージョン実績をもとにペルソナや入札単価を調整しますので、ある程度のボリュームのデータを読み込ませる必要があります。
AIが学習するデータが少なすぎる場合は成果が出にくくなりますので注意が必要です。
月にどれぐらいのコンバージョン数が必要なのですか?
Googleの公式発表によれば 必要なコンバージョン数は過去1ヵ月間で最低30件以上。 これに満たないとAIの機械学習が進まず、十分な精度を得られません。
機械学習が進まないことで、広告の品質インデックスも低くなり→表示回数も増えず→クリック単価もあがるという悪循環に陥ってしまいます。
ようは、AI時代のリスティング広告で成果を出すためには、いかにコンバージョン数を増やしてAIにパターンを学習させるかが大切なのです。
毎月、30件も問い合わせが入らないのですが・・・
一般的にコンバージョンタグは、お問い合わせ完了ページに設定すると思いますが、BtoBのホームページはBtoCと比較してそこまで多くの問い合わせが入らないという会社は多いと思います。
この問題に対して私たちがよくやる方法としては、資料ダウンロードなど比較的ハードルが低いコンバージョンもCV設定し、そこで件数を稼ぐというやり方です。
ただ、学習データのボリュームも大事ですが、質を意識することが大事です。
電話番号のタップをコンバージョンとして設定する場合は、見込み顧客以外の問い合わせの電話が多い会社の場合はCVとして設定しないほうがいい場合もあります。
そのようなユーザーを良質なユーザーだと間違ってAIが学習してしまうと、クリック数は増えたけどコンバージョンは全然増えない可能性があるからです。
部分一致でCVがとれるキーワードは見つかる
現在、3つ以上のキーワードを組み合わせて検索している人は、検索ユーザー全体の半分以上と言われています。
そうなると、こちら側で「うちのお客さんは○○というキーワードを検索して訪問している」と検索キーワードを決め打ちして広告を出すような運用ではコンバージョンは増やせません。
自分たちで考えつくキーワードは本当に調べられているキーワードのほんの一部だからです。
また、最初からキーワードを絞り込みすぎると、売り手視点でのキーワードしか広告が表示されませんので、機会損失を招きます。
おすすめは部分一致での運用
個人的に考えるベストな運用手法としては、最初は「部分一致」で広めに広告を出してみて、費用対効果を確認しながら筋肉質なアカウントにしていく方法です。
以前は「部分一致」でキーワードを追加すると、想定以上に広がって表示され、「これはウチの商品とは関係ないだろう」というキーワードまで表示されてましたが、現在はAIがうまく学習してくれている影響なのか、そこまで関係ないキーワードで広告が表示されることは少なくなっている印象です。
ただ、キーワードによっては今でも意味が広がりすぎることがありますので、その場合はフレーズ一致に変更するなど柔軟に運用していく必要はあります。
部分一致でキーワードを追加する場合は、最初の1〜2ヶ月間の調整が重要です。
人力での調整になりますが、自社の商品には関係ないキーワードでクリックされてる場合はこまめにキーワード除外の設定を行いましょう。
私の場合は、新しく設定したアカウントの場合は最初の1~2週間は毎日チェックして、検索クエリを見ながら除外キーワードの設定を行うようにしてます。
その後も1ヶ月ぐらいは最低でも1週間おきに検索クエリを確認して、無駄なキーワードで予算消化しない状態になるまで、除外キーワードを繰り返していきます。
ただ、あまりにも除外しすぎると、狭まりすぎて機会損失を招きますので、「このユーザーは見込み顧客なのかどうか」を見極められるビジネスセンスが必要です。
そのあたりの経験が不足してる運用者の場合は、検索クエリ一覧を営業の人など現場の人に見てもらって、意見をうかがいながら調整しましょう。
ランディング ページと検索クエリを合わせる
ランディング ページは超大事です。
売り手の視点ではなく、検索するキーワードに合わせ消費者心理を理解しながら必要なコンテンツや見せ方を考えましょう。
また、コンバージョン数を増やすためには検索クエリとランディング ページの関連性を高める必要があります。
「ランディング ページの利便性」は、広告をクリックしたユーザーにとってランディング ページがどれくらい関連性があり、役に立っているかを表します。ランディング ページのコンテンツとユーザーの検索語句との関連性の高さや、ページでの操作のしやすさといった要素が考慮されます。
検索数が多い検索クエリをLPのテキストに入れてみたり、画像だけのLPの場合はMETAやALTにキーワードを追加しましょう。
また、何も考えずに、トップページをリンク先に設定する方も多いですが、キーワードごとに「こんな課題を抱えて検索しているはず」という仮説をたてて、ベストなリンク先は設定するようにしましょう。
もし、LPのコンバージョン率が低いのであれば、検索キーワードとターゲットユーザーが少しズレている可能性があります。
現在とターゲットや訴求のポイントを少し変えるのもひとつの手ですが、うまくいってないということは、競合他社が強すぎるキーワードで戦っているケースも多いですので、その場合は、戦略自体を大きく見直す必要があります。
アカウント構成はシンプルイズベスト
広告のAIを学習させていくためのアカウント構成としては、キャンペーンと広告グループの数を最小限にして、キーワードも部分一致だけのシンプルな構成にすることをGoogleからも推奨されています。
除外キーワードなどのメンテンスも楽ですし、獲得1件あたりに払える顧客獲得コストと予算を設定しておけば、ある程度Googleが自動で入札調整してくれるようになります。
注意点として、コンバージョンがとれていないからといって、あまりコロコロと設定を変えてしまうとAIの再学習期間に入りますので、入札単価の変更をするとしても20%以内で最小限の回数にしましょう。
また、アカウント構成がシンプルになると運用自体はラクになりますが、どこに問題があるのかは自分で判断する必要がありますので、経験を積みながらAI運用の特長をつかんでいきましょう。
広告のAI運用にはクセがありますので、そのあたりの知見がある人がアカウントを運用しないとちゃんと成果が出ないこともあります。
限界CPAは把握できていますか?
リスティング広告での成功とは、運用をラクにすることでも、クリック数を増やすことでも問い合わせ数を増やすことでもなく、 最終的に利益をどれだけ残せるかです。
広告は利益を出すために使うものですので、広告への投資によって採算があわなくならないように、どれぐらいのCPA(獲得単価)におさめる必要があるかは必ず把握しましょう。
この目標CPAを設定する際は、商品の原価や広告費だけではなく、人件費などのコストも計算に含める必要があります。これ以上になると赤字になるというラインが「限界CPA」です。
限界CPAとは、1件の成果を得るためにかけられる費用の上限額であり、「売り上げ単価-原価-経費」の計算式で求められます。
例えば、売り上げ単価が10万円で、原価が30,000円、経費が10,000円の場合には、限界CPAは60,000円です。
この範囲で広告費が収まっていれば、赤字ではないですが、ギリギリだと利益が出ていない状態になってしまいます。
リスティング広告の管理画面では、広告費をコンバージョン数で割った「コンバージョン単価」が出ますので、これをどれぐらいにしたいか目標CPAとして常に頭に入れて運用をおこないましょう。
利益を出すためのリスティング広告運用やLP改善も行っておりますのでお気軽にご相談ください