AIがコンテンツを量産する時代に、事例だけは生み出せない理由

Webマーケティング
Webマーケティングシナリオ

AIがブログ記事を一瞬で量産できる今、唯一AIに生み出せないコンテンツがあります。それが顧客の実体験、つまり「事例」です。

なぜなら、AIは自ら体験できないので、そこから生まれる感情や本物のストーリーは作れません。

私は、これからのWebマーケティングで最も大事なのは、このような心に響くコンテンツをどれだけ作っていけるかが勝負だと感じています。

AIが普及するほど、コンテンツの質が大事になる

事例コンテンツでは、顧客が実際に体験したこと、感じたこと、どう変わったかという「真実」を紹介します。

AIが捏造しようとすれば、それっぽいコンテンツは作れるかもしれません。ただ、真実ではないので、読む人は、どこかでなにかが違うと必ず感じ取ります。何より、実在しない顧客の言葉を掲載すること自体に企業の姿勢として問題があります。

なぜ、事例が大事なのかと言うと、社会心理学者のロバート・チャルディーニが「影響力の武器」の中で示したように、人は他者の行動や体験を参照して意思決定を行うからです。特にBtoBのような大きな取引になるシーンでは「自社と似た状況の会社がどのように解決したか」という信用が、行動の動機になります。

あるマーケティング研究者が、「マーケティングの未来は、情報のやり取りではなく信頼の移転だ」と言ってました。たしかに、私たちがやっている仕事は以前のように「知ってもらうこと」ばかりではなく「どう信じてもらうか」に変わっているような気がしていました。そしてそれに最も影響を与えるのが事例コンテンツになります。

また、AIで「この分野でおすすめの会社はどこか」と検索された時、事例があるかないかは非常に重要な根拠になっています。これはSEOと同じ理論ですが、信頼できるコンテンツが積み上がっている会社が、AIにも選ばれるようになっているはずだからです。

事例ページがあっても、機能しない会社が実は多い

ここまで読んで、とりあえず事例ページを作ればいいのかと思った方も多いと思います。ただそのように単純な話ではないということをお伝えします。

AIを使ったりしてとりあえずそれっぽいページを何ページ作っても、お客様の心には何も響かないからです。

また、事例は「満足してくれたお客様の声を掲載すること」だと思っている人が多いのですが、失敗も含めて掲載したほうが信用されやすいと思います。

心に響く事例を作る時に決めないといけないことが3つあります。動かしたいKPIは何か。誰に届けるのか。その人は何を見れば動くのか。この3つが決まっていない事例は、作っても刺さりません。

例えば、競合から乗り換えてくれた顧客の話は「乗り換え型」で見せた方が刺さりますし、比較検討を経て選んでくれた顧客の話は「懐疑からの納得型」の方が、同じように慎重に検討している読者の心を動かします。

新しい市場を開拓したいなら「新しい使い方型」で見せると、まだ自社のサービスを知らない層に刺さる。誰に・何を信じてもらうかによって、事例の「語り方」を変える必要があります。

数字より、「変化のストーリー」が人を動かす

私が支援している、産業用PCの修理・延命専門会社である「株式会社日本ピーシーエキスパート」さんの話を少しさせてください。

同社のサイトには、現在30件近くの顧客インタビューが掲載されています。

富士電機株式会社、慶應義塾大学、在ベルギー日本国大使館など、業種も規模も異なる多様なクライアントの声が、丁寧に積み上げられています。そしてこの取り組みを継続してきた結果、問い合わせ数が増えただけでなく、問い合わせの質が上がってきました。

同社のインタビューで印象的な「数字」でまずは興味を引き、その後、読み込んでもらう中で理解してもらう流れにしています。

例えば、ある事例のタイトルは「4000万円超の損失を回避」という数字でまずはインパクトを与えています。でも読者が本当に共感するのは、その数字の裏にある課題や、希望が見えた時の安堵感、「もう大丈夫だ」と思えた瞬間の描写だと思ってます。

そこで、「メーカーに修理不可と言われた」「代替機も見つからない」「このままでは生産ラインが止まる」そういう状況に置かれた読者が、似た状況の顧客の言葉を読んだとき、「これは自分ごとだ」と感じる。その感覚こそが、質が高い問い合わせへとつながります。

「90%コスト削減しました」という数字だけをただ伝えるより、「以前は故障のたびに修理業者を探すことから始まっていた。今はもうそのストレスがない」という言葉で引き込むことで、心に刺さります。

人を動かすのは、数字ではなくその先にある「真実のストーリー」だということを、日本ピーシーエキスパートさんの事例が証明しています。

「効率」より「ストーリー」が、Webサイトを営業担当に変える

ここで一度、自社のことを振り返ってみてください。

営業の現場では「なぜうちが選ばれるのか」をきちんと語れているはずです。競合との違いや自分たちにしかできないこと、顧客が抱えている課題をどう解決できるのかということを、商談の場では自然に語っている。

でも、ホームページを見た見込み客はどうでしょうか。営業担当者と話す前に、まずサイトで判断するはずです。その時に少しでも印象に残っているのか。

営業力がある会社は、商談での説得力はあるのにWebでは魅力が伝わらない会社が多いように思います。多くは、事例という形で「証拠」をWeb上に残せていないことが原因です。対面では語れるのに、それがテキストや顧客の言葉として積み上がっていないのです。だから見込み客は比較検討の段階で迷って、他社に流れてしまっている可能性があります。

「事例を出したいが、顧客に取材を断られる」という声もよく聞きますが、確かに、顧客情報の扱いに慎重な会社はあります。でも正直に言うと、私がこれまで取り組んできた中で、本気で熱意を持って依頼すれば受け入れられる可能性は一定数あります。断られるのは、熱意が足りないか、依頼の仕方が悪いか、どちらかであることがほとんどです。

「御社の事例を紹介したいんです。これだけ成果を出していただいたことを、同じ課題を抱えている会社に伝えたいんです!」そういう熱意で、顧客の協力を引き出せていますか?本気で集客をしたいなら、それくらいの温度感で事例作成に取り組む必要があると思っています。

まとめ

AIが文章を量産できる時代になったことで、「情報をただ届ける」コンテンツの価値は相対的に下がっています。一方で、顧客の実体験という「本物の物語」の価値は上がっています。

事例は作るのに手間がかかるわりには、見た目は地味なコンテンツです。顧客への取材も必要で、手間はかかります。だからこそ、ちゃんと取り組んでいる会社と取り組んでいない会社では気がついた時に圧倒的な差が広がっていきます。

AIに書けるものは、競合もAIを使って作れます。でも、あなたの会社の顧客があなただけに語った言葉は、どこにも存在していないはずです。

それを事例コンテンツとして積み上げることが、これからのWebマーケティングで最も効く投資になっていくと私は思っています。

ご相談・お問い合わせ

ホームページリニューアルやWeb マーケティングの
課題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

資料請求

私たちの考え方や課題解決サービス内容を
まとめた資料をPDF でダウンロードできます。

お電話でのお問い合わせは092-925-9122(平日10:00~17:00)

桑原 敬

この記事を書いた人

桑原 敬(Takashi Kuwahara)

代表/プロデューサー

2003年にフリーランスのWebディレクターとして独立。2006年に株式会社桑原敬事務所を設立し、数多くの企業Webサイトや通販サイトの構築やコンサルティングを手がける。
2006年からレベニューシェアでのWebプロデュースを軸としたビジネスを展開し、これまでコンサルティングを行ったクライアントの中には年商が10倍以上になった実績もある。現在はWeb以外の分野でも、働きかたプロデュースなど幅広い分野で活動を行っている。

Facebook