
専門性の高い商材を扱っていたり、素晴らしいビジネスモデルをお持ちで、取引先からの評価も悪くないのに、Webサイトからの問い合わせがほとんど来ていないという会社は実は結構あります。
そこでこの「シナリオ」というコーナーでは、そういうニッチ企業を毎回ひとつ取り上げて、成果を出すためのシナリオを私が勝手に考えていきます。
実在する企業のサイトは使いません。個人的に魅力を感じるビジネスモデルで勝手に考えてみるという企画です。
なぜそんなことを始めたのかについて、まずは書かせてください。
正直なところ、もったいないと感じていた
当社は成果報酬型でWebコンサルをしている会社ですので、成果が出なければ基本的に費用はいただいていません。だから、伸びしろのあるビジネスモデルを見ると、単純に「うちに相談したらもっと伸ばせるのに」と思ってしまいます。
ただ、成果が出なければ報酬が発生しなくても、こちらが間違った方向に労力を注いだ時点で、自分たちだけでなくクライアント側も損をしますので、いい加減な仕事はできません。
とにかく、いいビジネスをされているのにWebから問い合わせが来ていない状態を見ると、もったいないという気持ちが湧いてきます。
なぜ架空の企業を題材にするのか
理由は二つあります。
ひとつは、実際の事例だと、書ける範囲がどうしても限られるからです。守秘義務の問題もありますが、それ以上に、成功事例というのは結果が出た後に書くものなので、きれいな成功例になってしまいます。
もうひとつは、これは完全にこちら側の都合なんですが、さまざまなビジネスモデルのシナリオをアウトプットしていくことが自分たちの力になるからです。業種が変われば、成果を出すための考え方が変わります。それを考える習慣は、いいトレーニングになるからです。
取り上げる業種は、当社が得意としている、ワンクリックで成約しない高価格帯の2ステップ型ビジネスで、必要なニッチ商材を扱っている業種で考えています。
この条件に当てはまる会社は、Web集客がうまくいっていないところが多いというのもあります。
多くのサイトに足りていないのは、想像力

仕事柄、いろいろな会社のサイトを拝見してきて、共通して感じることがあります。
自分たちのお客さんになりそうな人、つまりは見込み顧客を具体的にイメージできていないということです。もう少し正確に言うと、なんとなくイメージはできているのだけれど、それを言語化できていない状態です。
顧客像がまったくわからない、という会社は少ないと思います。長くビジネスをされていれば、どういう人から相談が来て、結局はどのような属性だと成約するのか、感覚では掴んでおられます。ただ、それを言語化するとなると急に難しくなるのです。
そこで、サイトをリニューアルしようとなると社長や担当者は自分が気に入っている競合他社のサイトを参考にします。あの会社はうまくいっているらしいから、ああいう感じに真似すればうまくいくだろうと考えるのです。
参考にしたつもりが、いつのまにか競合と同じようなサイトが出来上がります。デザインも、構成も、文章も似てくるとなると、お客さんから見て選ぶ理由が見当たらなくなります。たまたま先に見つけたか、その程度の違いでの勝負なのです。
ビジネスモデルには明らかに独自性があるのに、サイトを見ただけではそれが伝わらないのはもったいないと思います。
ニッチな業種は、問い合わせ数=売上にならない
もうひとつ、書いておきたいことがあります。
Web集客の話をしていると、どうしても問い合わせの数の話になります。何件増えたかをKPIにするとわかりやすいので、そこを目標にしたくなる気持ちはよくわかります。
でも、ニッチなビジネスモデルの場合、問い合わせが増えても、比例して売上は増えない場合が多い。
当たり前のことですが、問い合わせ客が成約につながって、はじめて売上になります。そして、成約するかどうかは、そもそもどのような問い合わせが来ているかでほとんど決まってしまいます。条件が合わない相手から100件来るより、合う相手から数件来るほうが、ビジネス的にはずっといいはずです。
問い合わせの質は、ニッチなビジネスモデルほど、見せ方やコンバージョンの導線などささいなことで変わってきます。
当社は成果報酬でやっているので、この問い合わせの質に関してはかなり神経質だと思います。問い合わせ数だけ増えても成約しなければ、クライアントも困りますし、こちらも報酬をいただけません。だから、取りたい層から問い合わせが入っているか、という質の部分をいつも気にしてます。
このコーナーで考えるシナリオも、たんに問い合わせを増やす案ではなく、欲しい層からの問い合わせを増やすためのものです。
実際のプロジェクトでもシナリオは使える
少し前の話になりますが、クライアントである日本ピーシーエキスパート様から「最近、法人からの仕事が増えてきている」というご相談をいただきました。
もともとは個人向けのパソコン修理で実績を積んでこられた会社です。そこに、工場などで使われている旧型パソコンを延命したい、という法人の需要が集まり始めていた。
このとき、既存のサイトの中に法人向けのページを足すという選択肢もありました。実際、少しは載せていたんです。ただ、今後力を入れていくサービスであることを考えると、別サイトとして独立させたほうが長い目で見ていいのではないかというシナリオを考えました。そして、2018年に、新しくドメインを取って新サイトを立ち上げました。
シナリオとして重視したのが、個人のお客さんと法人のお客さんでは、探し方も、気になる部分もまったく違うということです。同じサイトの中に両方あると、どちら向けの会社なのか中途半端に見えてしまいます。誰に向けたページなのかが曖昧になると、特にBtoBのお客様は自分ごととして受け取ってくれません。
BtoBのサービスのみ別サイトとして分けた結果、法人からの真剣な問い合わせが増えました。扱っている技術自体は何も変わっていません。変えたのは、誰に向けて何をどう見せるか、という部分だけです。
このシナリオの中でやろうとしているのは、毎回、こういう考え方をヒントとしてお伝えたいと思ってます。
問題解決より問題発見が大事
私は普段から、問題を解決する力より、問題を見つける力のほうが大事だと言っています。
いかにも本質的なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、実のところ、もっと即物的な理由です。
成果報酬型だと、間違った問題を解いてしまった時点で、致命的な失敗につながります。いくらWebサイトをリニューアルして、なんとなく良くなった気がしても、それで終わりです。当社がそれを繰り返していたら報酬が発生しませんし、会社が潰れてしまいます。だからこそ、どこにボトルネックがありどのようなシナリオが必要なのかを突き止めることに手間をかけるのです。
お客様にご相談いただくとき、最初に言われる課題はたいてい表面的なものです。デザインが古くさい、検索順位が低いなど、どれも事実ではあるのですが、本質的な原因ではないことが多いのです。
デザインを新しくしても、誰も興味を持たなければ、見た目がきれいになっただけで終わります。検索順位を上げても、そのキーワードで探している人が本来の顧客層でなければ、問い合わせは来るのに売上にはつながらない相手です。
このコーナーでも、毎回そこを疑うところから始めます。表面的にはこう見えるけれど、本当のボトルネックや解決のアプローチは別のところにあるんじゃないか、と。たぶん毎回、違う場所にヒントがあると思います。
このコーナーから持ち帰ってほしいもの
取り上げる業種は、同じBtoBであっても読んでくださる方の業種とは違うはずです。輸出用の産業用機械の回を、地域密着の士業の方が読んでくださっても、直接は当てはまらないでしょう。
それでも構わないと思っています。というより、そのほうがいいのかもしれません。自分と違う業種の話のほうが、別の視点での気づきがあるからです。
たまたま当社のサイトにたどり着いた方に持ち帰っていただきたいのは、答えではなく、考え方です。何に困っている人が、サイト内で意識がどう変わって、問い合わせをしようと思うのか。その人にとって最適なサイトになっているのか。
こういう視点で自社のサイトを見直したときに、何かひとつでも引っかかるところが見つかれば、このコーナーの役目は果たせたことになります。

そしてもし、それを自分たちだけで進めるのが難しそうだと感じられたら、その時はご相談いただきたいというのが本音です。
日本中にあるいいビジネスを持っている会社が、それにふさわしい顧客と出会って、こちらも一緒に成長していきたい。そういうお付き合いができるクライアントを1社でも増やしたくて、このコーナーを始めたからです。
次回からは、様々な業種のシナリオを立てていきたいと思います。

