
ChatGPTやClaudeなどの生成AIが登場してから、Webマーケティングの現場は大きく変わりました。
私自身、20年以上この仕事をしていますが、ここ1~2年の変化は特に大きく、iPhoneが発売された時よりインパクトがあるような気がします。
AIが劇的に変えたコンテンツ制作の現場
なんと言っても、AIの登場です。
AIが無かった時は、以下のような手順でブログ用のコンテンツを作っていたのですが、この一連の作業に、軽く半日以上はかかっていました。
- キーワードツールで検索ボリュームを調査
- Yahoo知恵袋やQ&Aサイトでユーザーの悩みをリサーチ
- 「ユーザーの課題はこれではないか?」と仮説を立てる
- ブログ記事のテーマを決定
- 構成案を作成
- ライターに依頼、または自分で執筆
1~2の作業はマニュアル化してるので経験が少ない人でも対応できますが、3~4の仮説を立てて構成を考える部分に関しては、経験が無ければ作れませんので、気軽に人に任せられない部分でした。
AIによってコンテンツ制作の流れが劇的に変わった
今はどうなのかというと、
AIに「○○業界のBtoB企業向けに、△△というテーマでブログ記事を書きたい」と投げるだけで、以下のようなものが数分で返ってきます。
- 想定ターゲット層の提案
- 読者の悩みや課題の整理
- 記事タイトル案(複数)
- 詳細な構成案(見出し構成)
- 各見出しの本文案
これまで半日かかっていた作業が、数分で完了するのですから・・・人間ではとても勝てません。
しかし、そのまま使えない
ここで重要なのは、AIが作った構成案や文章を「そのまま使えるか」という点です。
確かに、文章は自然で読みやすく、論理的で、情報も網羅されています。
しかし、実際に人が読んだ時に、なんとなく「違和感がある」「普通のことしか書いていない」「人の気配が感じられない」という印象を受けます。
特に、企業のブログやオウンドメディアでは、この「誰が書いても同じ」という部分が致命的です。なぜなら、競合他社も同じAIを使って、同じような記事を作っているので差別化できません。
結果として、検索エンジンにも評価されず、読む人にとっても、何も印象に残らないコンテンツになってしまいます。
クライアントから言われた「AIで十分じゃないですか?」
実際にクライアントからこう言われたことがあります。

ChatGPTで記事が書けるなら、わざわざ高いお金払ってまで、外注する必要はないんじゃないですか?
このような場合も、以前であれば

AIが書いた文章は不自然なので読む人に違和感を与えます。Googleもスパムとして認識する可能性がありますので!
こう自信を持って答えていました。
なぜなら、初期のAI生成文章は、明らかに機械的で間違いも多かったので、人間が読めば、すぐに「これはAIで作ったな」と分かるレベルでした。
しかし、ClaudeやGPT-4のような高精度なAIが登場してから状況は変わりました。
生成される文章は自然で、人が書いたものと見分けがつかないレベルになったからです。
論理構成もしっかりしていて、情報も(完璧ではないですが)正確です。「AIだからダメ」とは、もはや言えないレベルになっているのです。
プロのWebマーケターは何をすべきなのか
これから、私たちプロのマーケターはどこで差別化すればいいのかについて最近よく考えてます。
なんとなくたどり着いた答えとして「個性」と「信頼」と「キャラクター」の演出家なのかなと考えています。
私たちは実際にクライアントと会話する中で把握した「個性」と「信頼される理由」に合わせて、このコンテンツを書いている人の「キャラクター設定」を行っています。
- その分野の知識があり、実績が豊富なのは、プロとして当たり前です
- しかし、知識をひけらかすだけでは人には響かない
- 温かみや気遣い、細部の表現をどう伝えるか
- そして「この人がちゃんと書いているんだ」と感じてもらうことで信頼が生まれる
まず、ディレクターがクライアントの個性を理解し、キャラクター設定を考えた上で、ライターやAIにプロンプトで詳細な指示する流れを重視してます。
すると、同じテーマでも、クライアントらしさが滲み出る、オリジナルのコンテンツになります。これは、単にAIに書かせるだけでは絶対に作れないものです。
人間にしかできない仕事〜現場で見えてきた3つの役割
AIがコンテンツ制作の多くを担える今、Webマーケティングのプロは何をすべきなのか。長年の経験と、最近の試行錯誤から見えてきた「人間にしかできない役割」を整理します。
【役割1】課題の背景を読み解く
AIは「何が課題か」を教えてくれます。検索データやユーザーの声を分析し、表面的なニーズを整理することは得意です。
しかし、「なぜその課題が生まれているのか」「その背景にある本質的な問題は何なのか」を読み解くのは、まだ人間の仕事なのかなと考えています。
例えば、ある製造業のクライアントが「新規顧客が増えない」という課題を抱えていたとします。AIに聞けば、「SEO対策をしましょう」「SNSで発信しましょう」といった一般的なありきたりな改善提案が返ってきます。
しかし、実際にクライアントと話してみると、そもそも「自社の強みを言語化できていなかったり」「競合との違いが明確でなかったり」根本的な問題があることが分かります。
そこで感じた違和感を「なぜ?」と深掘りしていき、本質的な課題を感覚的に見つけるのは、対話と洞察力が必要な、人間ならではの仕事だと思います。
【役割2】雑談から本音とインサイトを引き出す
最も重要な情報は、実は雑談の中でポロッと出てくることが多いのは、経験値が高いコンサルは知ってます。
正式なヒアリングの後、「そういえば最近、こんなことがあって」と話してくれる何気ない会話の中に、解決のヒントが隠れていることはよくあるのです。
サンルーム.COMさんの事例
実際の事例をご紹介します。
エクステリアをネット販売するサンルーム.COMさんでは、当初は「洗濯物を干すためのサンルーム」という訴求だけに依存したマーケティングをを行っていました。
ある時、ミーティング後の雑談の中で
「最近、猫のスペースとしてサンルームを使いたいという相談を受けたんですよ」
という話になりました。
この会話から、私たちは「猫を飼っている人はサンルームに関心を持つ人が多いのではないか?」という新しい仮説に気づきました。
そこで、猫を飼ってる方に向けたコンテンツを作成してSEOを行ったところ、この仮説が当たり、これまでリーチできなかった新たなユーザー層を開拓することに成功しました。

「AIにいくら情報を入力しても、この「雑談から生まれる偶然の発見」は再現できません。人と人との会話だからこそ、出てくる情報なのです。」
【役割3】戦略を描き、優先順位をつける
AIは、たくさんのアイデアを出してくれます。「こんなコンテンツを作りましょう」「このキーワードを狙いましょう」と、次々に提案してきます。
しかし、「何をやるべきか」を決めるのは、人間の仕事です。
- クライアントの現状(リソース、予算、体制)
- 目指すべきゴール
- 競合の状況
- 市場のトレンド
これらを総合的に判断し、「今、最も優先すべきは何か」を決める。そして、PDCAを回しながら、継続的に調整していくことが大事です。
とくに人員と予算は限られている中小企業にとってすべてを行うのは無理です。
戦略的な意思決定を伴走支援することこそ、Webマーケティングのプロの本質的な価値だと考えています。
AIとの協働〜効率化と独自性の両立
では、実際に私たちはどのようにAIと協働しているのか。流れを少しご紹介します。
1. 人間が仮説を立てる
- クライアントとの対話から得た情報
- 市場調査や競合分析
- 長年の経験からの直感
2. AIに投げて、構成案を作ってもらう
- テーマを明確にして構成案を指示
- 複数の構成案を生成
3.人間が評価・修正する
- AIの提案を見ながら「これは違う」「これは良い」と判断
- ターゲット像の見直し、構成の調整
4. 壁打ちを繰り返す
- AIと対話しながら、仮説を磨いていく
- 「こういう視点はどうか?」「この事例を入れたらどうか?」などまるで人に相談するかのように投げかけていく
5. オリジナルコンテンツを注入する
- クライアントの実際の経験や実績
- 独自の事例や数字
- キャラクター設定に基づいた表現
この方法により、AIの効率性と、人間の独自性をうまく両立させています。
ただ、正直に告白すると、この方法は「意外と手間がかかる」というのが現実です。
従来の方法、つまりライターがクライアントにインタビューしながらコンテンツを作る方法と比べて、工数があまり変わらないか、場合によってはむしろ増えることもあります。
なぜなら
- AIとの対話(プロンプトの調整)に時間がかかる
- 生成された内容の精査と修正が必要
- オリジナル要素を追加する作業は結局、人間がやる必要がある
「AIを使えば楽になる」と思われがちですが、質の高いコンテンツを作ろうとすると、決して楽ではないのです。
では、なぜこの方法を続けているのか。
理由は明確です。「人間だけでは作れない、独自性のあるコンテンツ」を作るためです。
効率だけを求めるなら、AIに丸投げすれば良いでしょう。しかし、それでは競合と同じような記事が量産されるだけです。
私たちが目指すのは、ホームページを見る人に価値を提供し、クライアントの付加価値を伝え、信頼感を構築することで長期的な成果を生み出す仕組みを作ることです。
そのためには、AIの効率性を活用しつつ、人間の洞察力と創造性を注ぎ込む。この両方が必要なのです。
これからのWebマーケティングに必要なこと
AIがコンテンツを作れる時代、Webマーケティングはどう変わっていくのか最後に書きたいと思います。
AIを使うのは必須、しかしやみくもに使ってはいけない
まず大前提として、AIを使うことはこれからの時代、必須です。効率化できる部分は積極的にAIを活用すべきですし、AIを使わないという選択肢は、もはやありません。
しかし、やみくもにAIを使っても、成果は出ません。
AIに「○○について記事を書いて」と指示して、出てきた文章をそのまま公開する。これでは、競合と同じような記事が生まれるだけで、意味がありません。
明確にすべきは「自社の軸」
AIを効果的に使うために必要なのは、「自社の軸」を明確に伝えることです。
- 自社の強みは何か
- どんな課題を抱えている人がターゲットか
- どんな価値を提供できるのか
- 信頼されるためにどんなトーンで語るのか
この軸が曖昧だと、AIもどこに向かって良いか分からず、当たり障りのない内容しか生成できません。
逆に、軸がしっかりしていれば、AIはその方向性に沿って、質の高いコンテンツを作るパートナーになります。
プロの伴走支援の価値
では、中小企業の経営者や担当者が、自分でAIを使って質が高いコンテンツを作れるのか。理論的には可能ですが、現場を見ていて現実には難しいのではないかと私は感じています。
理由として
- 自社の強みを客観的に見つけるのは難しい
- どんなコンテンツを作るべきか、戦略が描ける人が社内にいない
- PDCAを回しながら継続的に改善していけない
だからこそ、私たちのようなWebマーケティングのプロが「伴走支援」をする価値があるのです。
私たちの仕事は
- クライアントと対話し、強みを見つける
- ターゲットと戦略を明確にする
- AIを効果的に使いながら、独自性のあるコンテンツを作る
- 効果を測定し、継続的に改善していく
この一連の流れを、クライアントと一緒に走りながらサポートする。それが、AI時代におけるWebマーケティングのプロの役割だと考えています。
AIを協働相手として、うまく使う企業が生き残れる
AIがコンテンツを作れる時代となり、効率という点では、劇的にラクになりました。
しかし、AIがすべてやってくれるわけではありません。AIが作れるのは「一般的な情報」までで、「付加価値」ではありません。
私たちプロのマーケターがやるべきことは
- クライアントの本質的な課題を見つける
- 雑談から、インサイトを引き出す
- 独自性を生み出すための方向性を示す
- AIと協働しながら、質の高いコンテンツを作る
- 継続的に改善し、成果につなげる
AIは敵ではなく、協働相手です。AIを使いこなし、その上で人間にしかできない価値を提供していくことが、これからのWebマーケティングのプロに求められる姿だと、私は考えています。

当社では、AI時代におけるWebマーケティングの伴走支援も行っていますので、AIをどう活用すれば良いか分からない、独自性のあるコンテンツを作りたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

