AI時代の顧客行動変化で問い合わせが減っていると思われる理由

Webマーケティング
Webマーケティングシナリオ

一部クライアントで起きている異変

あるBtoC向けの高単価商品を扱うクライアントでは、昨年と比較してこんな数字が出ていました。

  • ホームページへのアクセス数:ほぼ変わらない
  • 問い合わせ数(コンバージョン数):30%減少
  • 売上:20%減少

これまで「アクセス数は変わらないのにコンバージョン数だけが大きく落ちる」というケースは、大幅なリニューアルをした後だったり、競合が何か仕掛けてきたりした場合には何度かありました。

しかし、今回のケースでは、これらの要因が見当たらないのです。

サイトのデザインや導線は変えてませんし、競合の大きな動きも特にありません。商品構成も以前とほとんど変わりません。

BtoBではまだ顕在化していない

興味深いことに、この現象は今のところBtoB向けのホームページでは、特に見られません。

もともとBtoBはアクセス数が少ないこともあり、統計的に見えにくいだけかもしれませんが、個人的には時間差で出る可能性が大きいと考えています。

BtoCで起きていることが、いずれBtoBにも波及してくることはよくあるからです。

【3つの仮説】なぜ問い合わせが減っているのか

正直、明確な答えはまだ出ていませんが、最近の環境変化を踏まえて、いくつかの仮説を立ててみました。

【仮説1】AI検索で答えを得て満足している

ChatGPTをはじめとするAI検索サービスが急速に普及しています。

従来であれば、 「○○を解決したい」→検索→複数のサイトを閲覧→比較検討→問い合わせ

という流れだったものが、

「○○を解決したい」→AI検索で答えを得る→解決

となっている可能性が考えられます。

あるいは、AIで候補を絞り込んだ後にホームページを訪問するものの、AIの回答レベルが上がったことで、サイト訪問者が期待するものの質もだいぶ上がっているような気もします。

その期待に応えられない会社は、ホームページからの問い合わせが減るといった悪いループが起きている可能性があります。

【仮説2】意思決定プロセスの多様化

顧客が情報を得る手段は、以前のようにGoogleやYahooなどの検索エンジンだけではなくなりました。

ざっと思いつくだけでも

  • SNS(X、Instagram、TikTokなど)
  • YouTube等の動画プラットフォーム
  • Googleマップ
  • 口コミサイトやレビューサイト
  • LINE等のメッセージアプリでの情報共有

など多様なチャネルで情報収集を行い、ホームページは最終確認の場として訪れているだけになっています。

そうなると、ホームページに辿り着いた時点で、すでに比較検討ができており、あなたの会社はその中の候補の一つに過ぎない状態になっている可能性があります。

以前は検索サイト経由でホームページを訪問して、初めて知る流れだったのが、すでにSNSなどで情報を得ており、ホームページは最終確認だけに変わっているような気がします。

【仮説3】接点順序で競合に負けている

これまではSEO対策を行い上位表示されていれば良かったのが、今は競合他社がSNSや動画で先に顧客と接点を持っている可能性があります。特に若い経営者の会社ほど、SNSや動画マーケティングに得意だったり積極的ですので、そのような会社に負けている可能性もあります。

ユーザーは、まずSNSや動画で競合他社のことを知り興味を持った上で、「念のため他も見ておこう」と訪れているだけなのかもしれません。

その場合、ホームページの内容が競合他社とあまり変わらない場合、すでに顧客の心は先に接点を持った競合他社に傾いている可能性があります。

「変わるもの」と「変わらないもの」について考えてみる

この状況に直面して、あえて「Webマーケティングにおいて、何が変わり、何が変わらないのか」を考えてみました。

変わっているもの:情報接触の入口

明らかに変わったのは、顧客が情報に接触する「入口」です。

10年前は、検索エンジンが圧倒的な入口でしたが、5年ほど前からはSNSが台頭してきました。そして今はAIが新たな入口として加わっています。

このトレンドは、今後も続くでしょう。おそらく、私たちがまだ知らない新しいプラットフォームが出てくるかもしれません。

「ホームページさえあれば大丈夫」という時代は、完全に終わったと言えます。

変わっていないもの:意思決定の本質

しかし、変わっていないものもあります。それは「顧客の意思決定プロセスの本質」です。

特にBtoBや高額商材の場合、顧客は慎重に判断します。

  • この会社は信頼できるか
  • 課題を本当に解決してくれるか
  • 他社と比べて優れているのか
  • ちゃんと実績はあるのか

こうした判断基準は、AI時代になっても変わりません。

むしろ、情報が溢れ、選択肢が増えた今だからこそ、「信頼できる情報」「体系的にまとまった情報」「専門性の高い情報」の価値は上がっていると私は考えています。

私が今、取り組んでいる事

本来なら「これからのWebマーケティングの勝ちパターンはこれです!」と自信を持ってお伝えしたいところですが、正直に言えば、まだ明確な答えがありません。

長年、培ってきたホームページを軸とした集客という得意領域が揺らいでいることに、不安も感じていますが、不安を感じているだけでは何も変わりませんので、私が取り組んでいることと効果についていくつかご紹介します。

短期的な取り組み:複数動線での接点づくり

個人的にSNSはあまり使ってませんでしたが、マーケティングに不可欠なものとして積極的に取り組み始めました。

例えば、ブログ記事や事例などサイトに掲載しているコンテンツをAIでSNS投稿用にリライトして、X(旧Twitter)を中心に、InstagramやFacebookに投稿したところ、表示数やフォロワー数がかなり伸びていくことがわかりました。

SNSは情報の質だけでなく、接触頻度とのバランスが重要なポイントです。接触頻度を増やすためにも投稿内容のライティングでAIを活用する仕組みは有効です。

また、広告においてはGoogle広告のP-MAXを活用して、検索以外にもYoutubeなど広いリーチから、コンバージョンしそうなユーザーをAIに学習させる方法も効果が出てきてます。

中長期的な戦略:「選ばれる理由」を尖らせる

SNSなど、どのチャネルからユーザーが来ても、最終的に「ここは信頼できそうだ」と思ってもらえるコンテンツはどのようなものかを真剣に考えました。

  • 顧客の課題を深く理解した解決事例
  • 実際のプロジェクトで得られた知見
  • 自社の強みのわかりやすい伝え方

これらのコンテンツは以前と変わらず、コンバージョンに貢献する有益なコンテンツだとデータからわかりました。

AIが答えを返すようになったとしても、そのAIが学習する元の情報が必要ですので、その情報源として、質の高いコンテンツをホームページに蓄積しておくことは、今後ますます重要になると考えています。

こうした質が高いコンテンツは、一朝一夕には作れません。だからこそ、差別化できるのだと思います。

「様子見」は最悪の選択肢

「まだウチには影響が出ていないから大丈夫」 「もう少し様子を見てから考えよう」

そう思われる方もいるかもしれません。しかし、それは危険です。

データに明確に表れた時には、すでに手遅れになっている可能性があります。今、BtoCで起きていることは、いずれBtoBにも波及するかもしれません。

「正解が分かってから動きたい」という気持ちも理解できます。しかし、この変化が激しい時代、おそらく、誰も答えは持っていないでしょう。

大切なのは、変化を捉え、仮説を立て、小さく試してみることです。完璧を求めて動かないよりも、不完全でも動き始める方が、はるかに有利です。

早く気づき、早く動いた企業が、この変化の波を乗り越えられるのです。

変化の兆しに、どう向き合うか

集客チャネルは変わっても、顧客の課題は変わりません。 情報の入口は変わっても、意思決定の本質は変わりません。

小手先のテクニックに走るのではなく、 「私たちは顧客にどんな価値を提供できるのか」 「なぜ私たちを選ぶべきなのか」

この本質を改めて見つめ直すことが、何よりも重要です。

私たちは、20年以上にわたり中小企業のWebマーケティングを支援してきました。その経験があっても、この変化が早い時代のマーケティングは手探りの状態です。

しかし、だからこそ、クライアントの皆様と一緒に考え、一緒に取り組み、一緒に答えを見つけていきたいと思っています。

もし、あなたの会社でも「このままで大丈夫だろうか」と感じることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
一緒に考え、一緒に前に進むことはできます。変化を恐れず、しかし本質を見失わず。そんな姿勢で、この時代を一緒に乗り越えていきましょう。

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桑原 敬

この記事を書いた人

桑原 敬(Takashi Kuwahara)

代表/プロデューサー

2003年にフリーランスのWebディレクターとして独立。2006年に株式会社桑原敬事務所を設立し、数多くの企業Webサイトや通販サイトの構築やコンサルティングを手がける。
2006年からレベニューシェアでのWebプロデュースを軸としたビジネスを展開し、これまでコンサルティングを行ったクライアントの中には年商が10倍以上になった実績もある。現在はWeb以外の分野でも、働きかたプロデュースなど幅広い分野で活動を行っている。

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