「AIに引用される書き方」を試して、途中でやめた話

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AI対策と言われていることは、ひととおり試してきました。

例えば、記事の冒頭に定義文を置く、見出しの直後に結論の一文を入れる、記事の下のほうにFAQを入れるなど、どれも「AI対策に効果がある」と言われているものばかりですし、テクニックとしては間違っていません。

ただ、出来上がった文章を読み返すたびに、なんか違和感を感じます。結局、そのテクニックで書かれた部分を全部削除することが多くなりました。今回はその理由について書きたいと思います。

作るより削除する時間が長くなった

私はブログ記事を書くときにAI(Claude)を部分的に使っています。構成の壁打ちをしたり、これまでの記事との重複をチェックしてもらったり、効率化できる部分はAIを使ったほうがいいと考えているほうです。

少し前にSNSで「AIに引用されやすい文章の書き方」として紹介されていたプロンプトをそのままClaudeに読み込ませてみました。

例えば、見出し直後の40〜60語で完全な答えを置く、結論を先に置く、数値には出典をセットで入れるなど、米国の大学の研究が根拠になっているものもあって、書いてあること自体は間違ってないように思えます。

そして出力された記事も、一見すると整っています。構成にも情報にも抜けがありません。

でも、読み返すと、どうしても引っかかる部分がありました。

見出しのすぐ下に、「結論から言うと、〇〇です。」と判で押したように置かれています。何が嫌だったのかを自分なりに言語化すると、そこだけ書き手が消えているような気がしました。

読者は文章を読んでいるのに、その一行だけ、書き手が要約を無理やり入れるとすると、文章としては正しいのに、人が読んだときに不自然さを感じます。この違和感が、記事のあちこちにある状態でした。

最終調整の段階で、そのような一文を片っ端から削って、前後をつなぎ直して、自分の言葉で書き直す。これを何本か繰り返したところで、ふと思いました。

これは、最初から自分で書いたほうが早いんじゃないか・・・

誤解のないように書いておくと、これはAIが悪いという話ではありません。悪かったのは、私がAIにSNSで紹介されていたプロンプトをそのまま読ませたからです。

その戦術を自分なりに解釈して、「◯◯のように読者に話しかけるように書いてほしい」「AI対策より読み手の理解を優先する」のようにプロンプトでちゃんと指示しておけば、自然な文章が返ってくるはずです。

AIが悪いのではなく、AIに渡した設計図のほうに問題があったのです。

そして気づいたのは、あのようなテクニックが通用する読者は、記事をちゃんと読む人ではなかったということです。想定されていたのは、情報収集するロボット側でした。

失うのは順位ではなく信用

小手先のAI対策の話はたいてい「順位が上がるのか」「引用されるのか」「仕様が変わったら効果が消えるのではないか」に集中します。

でも、本当のリスクはそこではないと思っています。

一番怖いのは、サイトを見た人に「ここは私が探している会社ではない」と思われることです。

これは私自身が収集収集する側に回ったときによく感じるのですが、ある分野の情報を探していて、検索なりAIの回答なりで出てきたサイトを開く。開いた記事のタイトルはまさに知りたいテーマなのに、冒頭が「〇〇とは、〜のことです」から始まっていると「あれっ」となります。

いま本気で悩んでいるから調べているのであって、「〇〇とは」を知りたくて来たわけでありません。その定義文を冒頭に置いた瞬間、書き手はこちらを読者として見ていないことを感じます。

厄介なのは、どの会社のサイトを見たのかすら数日後には忘れてしまってるぐらい印象に残らない事です。

このあたりの感覚は順位レポートにも、引用数のダッシュボードにもデータが残りません。直帰率が跳ね上がるわけでもない。それでもサイトを訪れた一人ひとりの中に、静かに蓄積していきます。そしてある日、問い合わせの数は変わっていないのに、商談の質が落ちていることに気づきます。

余談ですが、AI対策を進めるほど、サイトが「どこにでもあるような会社」に近づいていくのも同じ理由だと思っています。AIに読み取られやすいフォーマットは、どの会社がやっても同じ形になります。同じ形になれば、当然、選ぶ理由も印象に残らなくなるわけです。

FAQを入れること自体は、まったく悪くない

AI対策のひとつとして、記事の下のほうにFAQを入れるという対策があります。

ここで誤解されると困るので、はっきり書いておきます。ページにFAQを設置すること自体は、何も悪くありません。大事なのは、そのFAQがあることに読者が違和感を覚えるかどうかだと思っています。

私がお手伝いしている株式会社日本ピーシーエキスパートさんは、生産設備に付いている古い産業用PCの修理・延命を専門にしている会社です。メーカーに「部品保有期間が過ぎたので修理できません」と断られたPCを直す、かなりニッチなビジネスを展開する会社さんです。

このサイトではサービスページごとに、そのページの内容に対応したFAQを設置しています。たとえば「故障修理」のページには、修理にどれくらい期間がかかるのか、費用はどれくらいか、修理不可能な場合はあるのか、といった質問が並んでいます。

この質問は、AIで作ったものではありません。実際に問い合わせとして多いものを、クライアントへのヒアリングから拾ってきたものです。

例えば、「応急修理した後から延命をお願いすることは可能ですか」という質問は、今期の予算では応急処置までしかできないけれど、来期の予算取りができたら本格的な延命をしたい、という現場のリアルな事情から出てくる質問です。現場の担当者と実際に話していないと、まず思いつかないFAQだと思います。

もうひとつ、一番効いていると思われるのは「修理不可能な場合もありますか」という質問への答えです。ここに「ゼロではありません」と正直に書いてあります。

AIに引用されることを狙ってFAQを作るなら、このような自社に不利な情報はまず書きません。でも、検討している人が一番怖いのは、時間もお金も使ったのに直らなかったらどうしよう、という部分です。だからそれに正直に答えることが大事です。その代わり、そういう場合でも仮想化やハードウェア入替という別の手段があるのでご安心くださいと紹介してます。

また、このページ全体が読者の側の視点で書かれていますので、最後にFAQが来ても違和感がありません。同じ「FAQを設置する」という施策でも、片方は自然で、片方は不自然になることがあるということです。

違和感の正体は、問いを立てずに答えを並べていること

私はずっと、問題解決力より問題発見力のほうが大事だと言い続けてきました。この話も、まさにそこに行き着きます。

FAQも、冒頭の定義文も、結論の一文も、要するに全部「答え」になります。

そして答えは、いまやいくらでも作れます。AIに頼めば、それらしいFAQは30秒で30個出てきます。文章としてもおかしくありません。

でも、問いのほうは作れないんです。

顧客が何に困ってこのページに来たのか、何が不安で発注のボタンを押せずにいるのか。それは顧客の中にしかありません。ヒアリングするか、問い合わせの記録を読むか、実際に話を聞くしかない。ここを飛ばして答えだけを並べると、答えの精度がどれだけ高くても、読者の疑問とはずれます。

そのずれが、あの違和感の正体だと思っています。

日本ピーシーエキスパートさんのFAQに違和感がないのは、文章がうまいからではありません。リアルな問いが実在するからです。実際に現場でよく聞かれる質問だから、同じことで困っている人が読んだときに「私もそれを知りたかった」となります。

逆に、AIに引用されるために置かれた文章が浮くのは、その問いを誰も持っていないからだと思います。

AIに引用されるかどうかは、目的ではない

AI対策について書いてきましたが、検索の歴史を振り返ると、答えはだいたい出ていると思っています。キーワードを詰め込んだ記事も、リンクを操作したサイトも、量産されたコンテンツも、アルゴリズムが変わるたびに価値を失ってきました。残ったのは、ロボットではなく人間に向けて作られたコンテンツだけです。

そしてAIは、読者の意図を読み取る精度を上げる方向に進んでいます。ということは、進化すればするほど、AIに読ませるためのテクニックは意味を失っていくはずです。

だから私は、AIに引用されることは目的ではなく手段だと考えています。順番を逆にした瞬間に、おかしくなります。

もし今、AI対策として何か施策をしようとしているなら、実装する前にひとつだけ試してほしいことがあります。

その文章を、あなたの目の前にいるお客さんに、声に出して読んでみることです。

「結論から言うと、弊社のサービスは〜です」と読み上げて、相手の表情があまりよくないなら、それは読者に向けて書かれていないと言う事です。逆に、実際の商談でお客さんによく聞かれる質問がそのままFAQになっているなら、それは入れて問題ないと思います。

正直に言うと、これはAI時代に始まった話ではないんです。心が入ってないコンテンツは、いつの時代も一目でバレます。ただ、AI対策という新しい対策が必要になったことで、そこを間違えやすくなっただけだと思っています。

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桑原 敬

この記事を書いた人

桑原 敬(Takashi Kuwahara)

代表/プロデューサー

2003年にフリーランスのWebディレクターとして独立。2006年に株式会社桑原敬事務所を設立し、数多くの企業Webサイトや通販サイトの構築やコンサルティングを手がける。
2006年からレベニューシェアでのWebプロデュースを軸としたビジネスを展開し、これまでコンサルティングを行ったクライアントの中には年商が10倍以上になった実績もある。現在はWeb以外の分野でも、働きかたプロデュースなど幅広い分野で活動を行っている。

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