
ChatGPTの検索機能、Google AI Overviews、Perplexityなど、AI検索ツールが次々と登場し、不安を感じている経営者やWeb担当者の方が増えています。
Google AI Overviewsは検索結果の上部にAIが要約を表示することでユーザーの質問に答えますし、ChatGPT検索は対話形式で回答するからです。
たしかに、これらを使う人が増えれば、従来の検索エンジン経由でホームページに訪れる人が減る可能性があります。
そこで今回はどのような業種のホームページが影響を受けるのか受けにくいのかについて考えたいと思います。
AI検索からの訪問者はまだ少ない?

AI検索が普及したら、うちのホームページは見られるんでしょうか?
このような質問を最近よくうけるようになりました。
私は毎日のようにGoogleアナリティクスでクライアントのサイトを確認していますが、AI検索から訪問する人はまだ非常に少ない状態です。これは私の感覚だけでなく、実は客観的なデータでも裏付けられています。
Google Analytics専門家による複数サイトの調査では、2025年6月時点でもAI検索からの流入は全体の1%未満、多くのサイトでは実際に0.5%未満となっています。2024年時点では、AI検索全体の流入数はサイトの全流入数に対して1%にも満たなかったというデータもあります。つまり、AI検索からの流入は徐々に増加していますが、現時点ではまだ主流とは言えない状況です。
さらに、日本には特有の状況があります。それは、Yahoo検索をポータルサイトとして利用している人が、まだまだ多いということです。
特にシニア層や主婦層は、Yahooを起点にインターネットを利用する傾向が強く、AI検索ツールに移行するのは、他の層に比べてかなり時間がかかると予想されます。
実際、日本は調査対象4カ国(アメリカ、中国、シンガポール、日本)の中で生成AIの利用率が最も低いというデータもあります。つまり、日本国内では、AI検索の影響が出るのは他国よりも緩やかになる可能性が高いのです。
影響を受けやすい業種・受けにくい業種
では、具体的にどのような業種が影響を受けやすく、どのような業種が受けにくいのか考えてみましょう。
最も影響を受けやすいのは、新しいものに敏感な層、いわゆる「アーリーアダプター」をターゲットとしているビジネスです。
アーリーアダプターは、新しいテクノロジーやサービスをいち早く試す傾向があります。当然、AI検索ツールもすぐに使い始めます。結果として、従来のGoogle検索からの流入が減少し、比較的早い段階で影響が出る可能性があります。
例えば、最新のIT製品・サービス、スタートアップ向けのソリューション、新しいビジネスモデルを提案する企業などは、AI検索への対応を早めに検討する必要があります。
BtoBビジネスでも、ターゲット層によって影響の度合いが変わります。
ベンチャー企業の経営者など若い世代の意思決定者をターゲットとしたソリューションを提供している企業は、影響をもろに受ける可能性があります。なぜなら、このような経営者もアーリーアダプターの傾向が強く、AI検索ツールを積極的に使い始めるからです。
逆に、比較的年齢層が高めの経営者がターゲットの商材であれば、影響を受けにくいと考えられます。従来の検索行動を続ける可能性が高いからです。
一方、影響を受けにくいのは、シニア層や主婦層をターゲットとしたビジネスだと思います。
前述の通り、この層はYahoo検索を利用する傾向が強く、すぐにAI検索に移行するとは考えにくいためです。特に、比較的単価が高い商品(じっくり検討する)、実物を見て判断したい商品(エクステリア、家具など)、地域密着型のサービスなどは、影響が出るのは中長期的になると予想されます。
実際の事例をご紹介します。当社のクライアントであるサンルーム.COMさんは、比較的高単価のエクステリア商品を取り扱っています。
ターゲット層としては、戸建てに住む主婦層やシニア層が中心です。
実際、このサイトでは、Yahoo広告でのコンバージョン数が安定しています。これはターゲット層がYahoo検索を利用しており、AI検索への移行がまだ進んでいないことを示していると考えられます。
つまり、ターゲット層とマッチした戦略を取れば、すぐに影響を受けるわけではないということです。
本質的には何も変わらない
ここまで、影響を受けやすい業種・受けにくい業種についてお伝えしてきました。しかし、重要なのは「本質的には何も変わらない」ということです。
AI検索の普及によって変わるのは、ユーザーがあなたのホームページに辿り着く「入口」です。従来は検索エンジン(Google、Yahoo)で検索してサイト訪問という流れでしたが、これからはAI検索で質問してAIの回答を見て、必要に応じてサイト訪問という流れになります。
この変化は、実は過去にも起きています。かつて、顧客が企業を見つける手段は「電話帳」でした。それが「検索エンジン」に変わりました。そして今、「AI検索」という新しい入口が加わろうとしています。入口は変わりますが、最終的に顧客が求めているのは「自分の課題を解決してくれる企業」であることに変わりはありません。
ここで重要な事として、AIは、自ら価値あるコンテンツを生み出すことはできないと言う事です。AIが学習するのは、人間が作ったコンテンツ。つまり、元となる情報がなければ、AIも答えられないのです。
AI検索が普及しても、「価値ある情報を持ち情報発信できる企業」が選ばれることに変わりはありません。むしろ、AIが情報を整理・要約する時代だからこそ、本質的に価値のあるコンテンツを持つ企業が、より明確に選ばれるようになるのです。
これまでも、ホームページで成果を上げるためには「ユーザーに役立つコンテンツを積み上げる」ことが重要でした。この本質は、AI検索時代になっても変わりません。
表面的なSEOテクニック、例えばキーワードを不自然に詰め込んだり、被リンクを大量に購入したりする手法は、これまでも長続きしませんでした。AI検索時代には、さらに通用しなくなるでしょう。しかし、ユーザーの課題を深く理解し、それを解決する情報を丁寧に提供するコンテンツは、今まで以上に価値を持ちます。
「AI検索対策の裏技」のような情報が、今後出てくるかもしれません。しかし、一時的にアクセスが増えたとしても、本質的な価値がないコンテンツは、結局淘汰されます。
私が20年以上、Web制作・Webマーケティングに携わってきた中で学んだのは、「本質的な価値を提供し続ける企業が、最終的に勝つ」ということです。
AI検索時代でも、この原則は変わりません。
過剰に恐れず、今できることをやる
ここまで読んでいただいた方は、おそらく「自社のホームページは大丈夫だろうか」という危機意識を持っているはずです。その危機意識こそが、実は最も重要だと思います。
この記事を読んでいる時点で、あなたは先を見ています。多くの企業が「まだ影響が出ていないから大丈夫」と何もしない中、あなたは変化に気づき、情報収集をしています。これは、競合他社との大きな差別化要因になります。
しかし、過剰に恐れる必要はありません。
AI検索の影響を認識することは重要ですが、過剰に恐れる必要はありません。前述の通り、現時点でのAI検索からの流入はまだ少なく、特にターゲット層によっては影響は限定的です。また、すぐに劇的な変化が起きるわけではありません。むしろ、今は「準備期間」として捉えるべき時期です。
一部のサイトではAI Overviewsの影響でトラフィックが70%以上減少したというデータもありますが、これは特定の情報提供型サイトでの事例です。すべての業種で同様の影響が出るわけではありません。
では、今何をすべきか。答えはシンプルです。「ユーザー視点で価値あるコンテンツを作る」ことです。
AIが入口になっても、最終的に選ばれるのは価値ある企業です。
ユーザーの役に立つ商品・サービスを提供する、それを分かりやすく伝えるコンテンツを作る、ユーザーの課題を深く理解し解決策を示す、実績や事例を具体的に紹介する。これらは、AI検索時代以前から重要だったことです。そして、これからも変わらず重要です。
また、AIを敵視する必要はありません。むしろ、AIを味方にする発想が重要です。
例えば、Google広告にはAI-MAXという機能があります。これは、AIが自動的に広告配信を最適化してくれるものです。AI検索でGoogle検索からの流入が減っても、AI広告でカバーできる可能性があります。新しいテクノロジーを取り入れながら、柔軟に対応していく姿勢が求められます。
定期的な情報収集と、できることの積み重ね
AI検索をめぐる状況は、日々変化しています。ChatGPTの新機能、Googleの新しいアルゴリズム、新しいAI検索ツールの登場。AI関連の情報は目まぐるしく変わります。最新情報を定期的に情報収集することは重要です。
ただし、情報に振り回されないことも大切です。すべての新情報に反応する必要はありません。自社にとって本当に重要な情報を見極めることが必要です。
完璧な対策を求める必要はありません。今、自分たちにできることを考え、一歩踏み出すことが大事です。
例えば、既存のコンテンツを見直してユーザーの課題により深く応える内容に改善する、新しい記事を1本追加する、事例紹介を充実させる、よくある質問ページを作る。小さな一歩でも、継続的に積み重ねることが、競合他社との差別化につながります。
「うちだけ遅れているのではないか」と不安になるかもしれません。しかし、競合他社も同じように悩んでいます。誰もが正解を持っているわけではありませんし、この不確実な状況の中で、行動した企業が有利になります。完璧を待つのではなく、今できることを始めることこそが重要なのです。
変化を恐れず、本質を見失わない

AI検索時代は確実にやってきますが、何も焦る必要はありません。
AI検索からの流入は増加トレンドにあります。Google AI Overviewsの表示率は、グローバルで約18%、米国では最大30%というデータがあり、確実に普及は進んでいます。ただし、表示率は検索クエリの種類や地域によって大きく異なります。
しかし、現時点ではまだ過渡期です。特に日本では、Yahoo検索利用者が多く、AI検索への移行は緩やかになると予想されます。冷静に状況を見極めながら、対応していくことが重要です。
入口が変わっても、求められるものは同じです。ユーザーの課題を解決し、価値を提供する。この本質を見失わなければ、どんな変化が来ても対応できます。表面的なテクニックに走るのではなく、本質的な価値提供にこだわる。これが、長期的に成功する唯一の道です。
変化の中で、「自社の方向性は正しいのか」と不安になることもあるでしょう。そんな時こそ、外部の客観的な視点が役に立ちます。
私たちは、中小企業のWebマーケティングを支援してきました。AI検索時代という新しい変化の中でも、一緒に考え、一緒に実行し、変化を乗り越えるパートナーとして、お手伝いをさせていただきます。
もし、「自社のホームページはこのままで大丈夫だろうか」と不安を感じているなら、ぜひ一度ご相談ください。一緒に、これからの時代を生き抜く戦略を考えていきましょう。

