
生成AIのおかげで、コンテンツを作ること自体のハードルはずいぶん下がりました。
以前ならブログを1本書くのに半日以上かかっていたものが、今は下書きレベルなら数分でできてしまいます。それなのに、「ページは増えているのにアクセス数が伸びない」という相談を最近よく受けるようになりました。
その対策として「1次情報をもっと入れましょう」と説明する記事も見ます。言っていることは正しいと思います。ただ、私が現場で実際に聞くのは、「うちの会社にはそんな特別な情報なんてないですよ」という言葉です。
ネタがないのではなく、自分たちの持っているものに価値があると気づいていない人は多いのです。
AIが書いた記事が似てしまう、本当の理由
AIは、Web上にすでにある情報を材料にして文章を組み立てています。だから同じテーマで同じように指示を出せば、誰が作っても似たような記事が出てくるのは仕方がありません。
問題はその次で、「じゃあ自社にしか出せない情報を入れよう」と思っても、大半の会社がそこで止まってしまう事です。自社の独自データを入れる、現場の知見をまとめる、などどれも正論なんですが、そもそも自社の何が「独自なのか」がよく分かっていない状態でこれをやると、ただ仕事が増えるだけで中途半端に終わります。
「うちには書くネタがない」と言う会社ほど、実はネタを持っている
強みというのは、自分では気づきにくいものだと思っています。毎日やっていることは、やっている本人にとっては当たり前です。10年以上続けてきた事も、社内では「普通の業務」でしかありません。それが外部の人間から見たら他社にできないことだったりします。
だからこそ、外部から客観的に見て強みを引き出してくれる人は大事なのです。
私はこの「引き出す」という仕事が昔から好きでした。ホームページを作るという行為そのものより、その会社の中に埋まっている宝を見つけて言葉にしていく過程は正直おもしろいものです。
雑談から出てきた強み
クライアントである日本ピーシーエキスパートさんは、もともと個人向けのパソコン修理をメインにされていました。当社も10年ほどはその個人向けの集客のお手伝いをしてきました。
きっかけは社長の森田さんとの雑談でした。最近どんな依頼が多いんですか、といった何気ない流れの中で、「実は法人からの依頼が増えていて、それも古いPCの修理が多い」という話が出てきました。しかも、その領域は単価も高く、他社ではあまり対応できていないということでした。
これを聞いたときに、これは!と思ったのを覚えています。企業にとって古いPCが動かなくなることは、業務が止まることを意味します。そして、それに対応できる修理会社が少ない。ここにははっきりと需要があるのに、当事者からするとただの日常業務だったわけです。
なぜヒアリングシートでは出てこないのか
もしこれを「御社の強みを3つ教えてください」という形式で聞いていたら、この話は絶対に出てこなかったと思います。そう質問された経営者は、たいてい模範解答を用意してしまうからです。どこの会社でも言えることばかりを言われるはずです。
意外なヒントが詰まっているのは、何気ないところです。最近こういう依頼が入った、お客様にこう言って喜ばれた、あの案件は大変だったけど他ではできなかったと思う。そういう会話の断片のほうが、よほど強みに近いところにあります。
だから私は、いきなり本題に入らずに雑談から始めることが多いのです。効率は悪いのかもしれませんが、今思うと、この雑談も私の強みなのかなと思います。
中小企業でないと、この話は出てこない
弊社のクライアントは中小企業が多いので、経営者の方や事業責任者の方と直接お話しできることがほとんどです。だから雑談の中から本音が出てきます。
ところが、たまにご相談をいただく大企業の案件では、そういうやり取りができないことが多いのです。窓口になるのが担当者の方で、その方の経験が浅いと、返ってくるのは社内で用意された決まりきった答えだけになってしまいます。
これは担当者の方が悪いという話ではありません。その方の立場では、自社の何が現場で価値になっているかを判断する材料がそもそもないのです。だから、強みが見えていないのは会社の問題というより、誰と話せるかの問題でもあります。

1次情報を掘り出したいなら、現場と経営の両方が見えている人に話を聞くしかない、というのが私の実感です。
出てきたヒントの中から、何を「強み」として拾うのか
雑談をすればいい、という単純な話でもありません。1時間話せば、面白い話は10も20も出てきます。その中からどれを選ぶのかが、実は一番難しいところなんじゃないかと思っています。
私が見ているのは、ほどよくニッチで、それでいてある程度のニーズが存在している領域かどうか、という部分です。ニッチすぎると、そもそも市場がありません。誰も検索していないキーワードで1位を取っても意味がありません。
かといって広すぎると、資本力のある競合に埋もれて終わります。その間にある、狭いけれど確実に困っている人がいる領域。古いPCの修理は、まさにそこでした。
これは私が元々、BtoB向けの営業をやっていたことも大きいと思います。法人のお客様(とくに経営者)が何に困っていて、何にお金を払うのか。そのあたりの嗅覚は、制作の現場だけを見てきた人とは少し違うのかもしれません。とはいえ、これは体系化された理論ではなく経験則ですので外すこともあります・・・。
そしてここで一つ、厳しい話もしておきます。強みが見つかっても、それが顧客の求めているものと重ならなければ、コンテンツにしても見られません。
1次情報であることと、読者にとって価値があることは別なんです。自己満足に情報を出していっても、結果にはつながりません。
自分たちだけで、強みを見つける方法はある
とはいえ、毎回、私のような外部の人間に相談できるわけではないと思います。ただし、社内でもできる方法はあります。
まず、お客様が言った言葉をそのまま記録しておくことです。営業担当がまとめた報告書ではなく、生の言葉のほうです。報告としてまとめられた時点で、多くの場合「対応に満足いただけた」のような一般的な表現に丸められてしまいます。でも実際にお客様が言ったのは「他社のここがいいんだが」だったかもしれない。その一言のほうが、よほど記事の起点になります。
もうひとつは、社内で当たり前だと思っていることを、新入社員や中途入社の人に聞いてみることです。入ったばかりの人は、まだ社内の常識に染まっていません。
「これって普通じゃないんですね」という反応が出てきたら、それはかなりの確率で強みです。外の目を借りられないなら、社内で一番外に近い人の目を借りる。そういう考え方でいいと思っています。
1次情報を入れましょう、という言い方をすると、どうしても難しい話に聞こえてしまいます。でも本当に必要なのは、その会社にしかないストーリーを見つけて、それを見た人にどう伝えるかを考えることなんじゃないでしょうか。
少なくとも私は、そこが成果を出すためには一番大事な部分だと思っています。

