
Googleの検索結果にAI概要(AIオーバービュー)が表示されるようになってから、「サイトへのアクセスが減るのでは」と不安を感じている人も多いと思います。
実際、当社のクライアントからも「これからSEOは厳しくなりますよね?」と相談されることも増えています。
ただ、正直に言うと、私はそこまで悲観していません。
その理由として、実際に管理してるサイトのアクセスデータを見ていると、AIオーバービューが出始めてから影響を受けているサイトと、問い合わせ数がほとんど変わっていないサイトに分かれてきているからです。今回は、この差は何なのか仮説を書いてみたいと思います。
AIオーバービューが「答えられること」と「答えられないこと」
まず前提として、AIオーバービューが何を得意としているかを整理しておきます。
Googleが検索結果の上部に表示するAI生成の回答は、要するに「インターネット上に存在する情報の要約」になります。一般的な知識、よくある質問への回答、手順の説明、価格の目安など。こういった情報はAIが得意とするところで、ユーザーはわざわざサイトに訪問しなくても答えを得られてしまいます。
では、AIが答えられないことは何か?
これまでの実績の詳細な部分や、担当者の顔が見えるようなコンテンツはAIオーバービューでは答えられません。また、創業の経緯や、失敗から学んだこと。あるいは「この案件はこういう理由でお断りしました」といった、その会社にしか語れないエピソードも答えられません。
これらはどれも、インターネット上の一般的な情報ではなく、その会社固有の情報がほとんどなので、AIには要約のしようがないのです。
現時点では、AIオーバービューが提供できるのは「広く浅い情報」までだと思っています。人の心を動かすような深い部分や、その会社の実像に迫るような情報は、サイトに来て初めて伝わるからです。
人はなぜ、AIの回答を見た後にサイトへ来るのか
ここが本質だと思うのですが、ユーザーがAIオーバービューを見た後にわざわざサイトへ来る時、どういう心理状態にあるのかを考えてみてほしいのです。

私が考えるには「もっとちゃんと確認したい」「確かめたい」という気持ちだと思います。
AIが出した一般論はAIオーバービューで見て、概要は分かった。でも、この会社に本当に信頼できるのか、まだ判断できない。だからサイトへ行って、もう少し深く知ろうと思う。
このような心理の動きが起きやすいのは、大きなお金と信頼感が絡むケースです。
BtoCであれば、数十万円以上の商品や、単発で終わらない継続型のサービス。たとえば注文住宅、リフォーム、資産運用、医療や美容の施術など。こういったサービスは「とりあえずAIの回答で判断しよう」とはならないと思います。なぜなら失敗した時のリスクが高いから、時間をかけて詳しく調べるはずです。
BtoBについては、ほぼ全般的にAIオーバービューの影響を受けにくいと考えています。
製造業の設備投資、ITシステムの導入、採用支援、Webマーケティングの依頼、どれも決裁金額が大きく、かつ関係が長期にわたることが多いからです。発注担当者が「AIの回答だけ見て決めました」とは絶対ならないですよね。
要するに、「高額・継続・信頼」の三つが重なるビジネスほど、AIオーバービューが出ても問い合わせは来るのです。
問い合わせが来るサイトに共通していること
では具体的に、そのようなサイトはどんなコンテンツを持っているのかをご紹介します。
まず、これまでの実績が詳細に書かれています。「◯件の実績があります」という数字の羅列ではなく、「このようなクライアントが、どんな課題を持っていて、どのようなアプローチで、結果どうなったか」というプロセスが詳しく書かれている。これはAIが自動で作成できないコンテンツで、実際に関わった人間にしか語れない話です。
次に、担当者や代表の顔と考え方が見える。写真があるだけではなく、「自分はなぜこの仕事をしているのか」「何の専門家なのか」「どんな考え方を大切にしているのか」といった、人間的な部分が伝わるコンテンツが必ずあります。
これらに共通しているのは、「その会社の価値」が滲み出ているということです。AIが要約しようとしても、要約できない固有性があるので、サイトで詳しく見てみたくなるのです。
逆に、影響を受けやすいサイトの特徴
裏返して考えると、影響を受けやすいサイトの特徴も見えてきます。
どこにでも書いてあるような一般論だけで構成されているサイトです。「私たちは◯◯の会社です」「丁寧な対応を心がけています」「お気軽にご相談ください」など。
こういった文章は、正直なところ、AIに要約されて終わりです。情報としての固有性がないから、サイトに来る理由をユーザーに与えられないからです。
また、サービスの説明はあるが「この会社らしさ」がないサイトも同じです。機能やスペックは書いてある。でも、なぜその会社に頼むのかという理由が伝わってこない。そういうサイトは、AIオーバービューが登場する前から、実は問い合わせが少なかったのではないかと思います。
AIオーバービューは、ある意味で「コンテンツの質」を可視化するフィルターになっている気がします。一般論しかないサイトはAIに代替され、その会社にしか語れない情報を持つサイトは引き続きユーザーを引きつける。この構造は、SEOが普及した時に起きたことと本質的には似ているような気がしてます。
では、何から手をつければいいか
「では、具体的に何をすればいいか」と言いたくなると思います。
まず最初にやるべきことは、自社の「AIに書けない情報」を棚卸しすることだと思っています。
たとえば、過去に手がけた案件の中で「これは特に印象に残っている」というものを3つ挙げてみてください。なぜ印象に残っているのか。どんな困難があったのか。クライアントにどんな言葉をかけてもらったか。そういった記憶の中に、コンテンツの素材が眠っているはずです。
次に、実績ページを深掘りすることが最初の一手になることが多いです。
「◯社の実績」という数字のページを、1件1件、プロセスと結果を具体的に書いたページに変えていってください。これだけで、問い合わせの質が変わることがあります。問い合わせが来た時に「あの事例を見て連絡しました」と言われることが必ず増えてきます。
余談ですが、私が以前に関わったBtoB製造業のクライアントでも、製品スペックだけを並べたサイトから、開発担当者のインタビューや技術的な背景を書き込んだサイトにリニューアルしたところ、問い合わせの件数よりも質が大きく変わりました。
「こういう課題があって御社に相談したい」という、すでに検討が進んだ状態の具体的な問い合わせが増えました。
これはAIオーバービューがあろうとなかろうと、本質的なコンテンツの力だと思っています。
まとめ

私は、AIオーバービューを過度に恐れる必要はないと思っています。
少なくとも、今の段階で「質が高く濃いコンテンツ」を多く持っているサイトは、あまり影響を受けていません。
むしろ今回のAIオーバービューの普及が明らかにしたのは、「どこにでもある情報しかないサイト」の限界だと私は感じています。それは以前からそうだったのかもしれませんが・・・より見えやすくなったというのが正解かもしれません。
信頼関係はAIには構築できません。「この人に頼みたい」「この会社なら大丈夫そうだ」という判断は、担当者の考え方を読んだり、実績を確かめたりする中で生まれる。そのためにユーザーはサイトに来るんです。
だとすれば、今やるべきことはAIへの対策ではなく、「ウチにしか語れない情報をサイトに載せること」だと思っています。
それがAIオーバービュー時代における、最も本質的なWebマーケティングの答えです。

