シニア向け高級賃貸マンションのWeb集客戦略

Webマーケティング
Webマーケティングシナリオ

シニア向け高級賃貸マンションへの参入が、ここ数年で一気に加速しています。東急不動産の「グランクレール」、三井不動産の「パークウェルステイト」、積水ハウスの「グランドマスト」。鉄道系やデベロッパー系の大手が、次々とこの市場に参入してきています。

背景にあるのは、日本の高齢化が生み出す住み替えニーズです。高齢者の持ち家率は80%以上と高い。でも年齢を重ねるにつれて、「この家を維持するのが大変だ」「もっとコンパクトに暮らしたい」という声が増えていく。特に富裕層のシニアにとっては、分譲を買うよりも賃貸で身軽にいたいという選択肢が、想像以上にリアルなものになってきています。

これから市場は間違いなく伸びます。でも、参入する事業者も増えていきます。そうなると当然、Web集客勝負になります。ただ、正直に言うと、きれいなホームページを作っただけで入居者が集まる時代は、もう終わっています。

今回は、シニア向け高級賃貸マンションの事業者が押さえるべきWeb集客の考え方を、実感も交えながらお伝えします。

シニア向け高級賃貸マンション市場は、今どうなっているのか

シニア向けの住宅市場と聞くと、まだニッチな印象を持つ方もいるかもしれません。ただ、実態は少し違います。東京カンテイのデータによれば、シニア向け分譲マンションの供給戸数は2020年以降、首都圏を中心に大幅に増加しています。分譲だけでなく、賃貸型のシニア住宅についても同様の動きが見られます。

東急不動産HDグループのグランクレールは東京・神奈川エリアで25住宅・約2,240室を展開していますし、三井不動産グループも湘南藤沢に高級シニアレジデンスを開業しました。旭化成のヘーベルVillageはサービス付き高齢者向け賃貸住宅として運営実績20年を持ちます。

こうした大手が参入する理由はシンプルです。日本の高齢者人口は今後も増え続け、その中でも「元気で経済力のあるアクティブシニア」は、住まいに対して高い要求を持っている。しかも持ち家を売却して住み替えるというパターンが増えているため、資金力のある入居者が見込める。事業としての旨みがあるわけです。

ただ、ここで見落とされがちなことがあります。大手が参入すれば当然、中小規模の事業者は埋もれやすくなります。ブランド力や資金力で劣る事業者が、どうやって入居希望者に見つけてもらい、選んでもらうか。ここにWebマーケティングの重要性があります。

シニア世代はどうやって”終の棲家”を探しているのか

「シニア世代はインターネットを使わない」という思い込みは、もう完全に過去のものです。

LINEヤフーの2024年調査によれば、60代のスマホでのインターネット利用率は87%。3年前と比べて9ポイントも上昇しています。70代でも59%と、17ポイントの急上昇です。総務省の通信利用動向調査でも、2024年時点のインターネット普及率は全体で85.6%に達しており、70代でも約7割がネットを利用しています。

つまり、シニア世代が住み替えを検討する際、まずスマホやパソコンで情報収集するのは、もはや当たり前の行動です。実際に見学に行く前に、Webサイトを見比べて候補を絞り込んでいると考えるべきでしょう。

ただし、若い世代との違いもあります。シニア層は情報収集に時間をかける傾向があります。一度のアクセスで問い合わせに至ることは少なく、何度もサイトを訪れ、じっくり比較検討する。信頼できる情報かどうかを慎重に見極めようとする。この「慎重さ」を理解しているかどうかで、Webサイトの設計は大きく変わってきます。

検索キーワードから見える本音

シニア向け高級賃貸のWeb集客を考えるとき、「シニア向け 高級 賃貸」のような直接的なキーワードだけに注目するのは不十分です。

実際に住み替えを検討しているシニアやそのご家族は、もっと手前の段階から検索を始めています。「持ち家 老後 維持費」「終活 住み替え タイミング」「老後 賃貸 メリット」「一人暮らし 高齢者 安心」。

こういった”悩み”や”不安”から始まる検索行動を拾えるかどうかが、実は集客の分かれ目です。

これは私が常々お伝えしていることですが、コンバージョンにつながるキーワードは、検索ボリュームが小さいことが多い。でも、そこには確実に「困っている人」がいます。

シニア向け高級賃貸の市場は、まさにこの原則が当てはまる典型例だと考えています。

なぜ”きれいなホームページ”だけでは入居者が集まらないのか

余談ですが、以前、高級住宅を販売するクライアントの集客支援をしていたとき、こんなことがありました。ホームページのデザインをリニューアルし、写真も一新し、見た目はかなり良くなった。でも問い合わせ数はほとんど変わらなかったのです。

原因を探ると、見込み客が求めていたのは「きれいな外観写真」ではなく、「この会社に任せて大丈夫か」という安心感だったのです。施工実績、お客様の声、担当者の人柄が伝わるコンテンツ。そういったものが決定的に不足していました。

高単価な商材ほど、実はきれいなデザインだけでは人は動かない。これは高級戸建でもシニア向け高級賃貸でも、本質は同じだと考えています。

シニア富裕層が本当に見ているのは「人」と「実績」

シニア向け高級賃貸マンションのWebサイトを見ると、多くの事業者が設備やサービスの紹介に力を入れています。共用施設の写真、食事の内容、医療連携体制。もちろんこれらは重要な情報です。

でも、入居を検討しているシニアやそのご家族が本当に知りたいのは、そこで暮らす「人」のリアルな姿ではないでしょうか。実際に入居している方の声、スタッフの対応、日常の雰囲気。数千万円の入居金や毎月数十万円の家賃を支払う決断をするとき、設備のスペック表よりも、「ここなら安心できそうだ」と思える情報が決め手になるはずです。

ヒートマップ分析をすると、スタッフ紹介のページや入居者インタビューのページに長い滞在時間が記録されるケースは少なくありません。見た目の華やかさよりも、信頼感を伝えるコンテンツ。ここに重点を置くべきです。

シニア向け高級賃貸のWeb集客で押さえるべき3つの戦略

コンテンツで「不安」を解消する

シニア世代にとって、住み替えは人生の大きな決断です。費用のことだけでなく、「今の家を離れて大丈夫だろうか」「入居後の暮らしはどうなるのか」「体調が悪くなったらどうなるのか」という不安が常についてまわります。

この不安を解消するためのコンテンツを、どこまでしっかり用意できるかどうか。ここがWeb集客の成否を大きく左右します。

具体的には、終活や住み替えに関するお役立ち情報、入居者の一日の過ごし方を紹介するストーリー型コンテンツ、よくある質問への丁寧な回答ページ。こうしたコンテンツが充実しているサイトは、検索エンジンからの流入も増え、かつ訪問者の信頼感も醸成できます。

費用面の透明性も重要です。「料金はお問い合わせください」としか書いていないサイトと、料金体系の考え方やプランの違いを丁寧に説明しているサイト。どちらが問い合わせにつながりやすいかは、言うまでもありません。

広告よりも「見つけてもらう」導線をつくる

シニア向け高級賃貸の場合、リスティング広告をガンガン出せばいいというわけではありません。なぜなら、検討期間が長いからです。広告をクリックしてすぐ申し込むようなものではありません。

むしろ重要なのは、検討の初期段階から「見つけてもらう」ことだと思います。前述した「持ち家 老後 維持費」や「終活 住み替え」といった周辺キーワードでのSEO対策が、ここで活きてきます。

検索ボリュームが月に数十件しかなくても、そこから流入してくる人は明確な課題を持っている。こうしたキーワードを丁寧に拾い、良質なコンテンツで応えて、メールマガジン登録などで見込み顧客リスト化していくことが長期的に安定した集客基盤をつくります。

これは私の考えですが、広告は「刈り取り」には向いていますが、「種まき」にはコンテンツの方が圧倒的に強いです。シニア向け高級賃貸こそ、種まき型のWeb戦略が合っているのです。

ホームページを「24時間働く営業担当」にする

シニア向け高級賃貸のWebサイトは、24時間働く営業担当であるべきです。見学予約や資料請求への導線が、サイト内のどのページからもスムーズにたどれるようになっているか。ファーストビューで、来訪者に「ここは私が探していたものだ」と直感的に伝わるかが大事です。

ここで気をつけたいのが、シニアならではの閲覧行動です。文字は大きめに、コントラストを高く、ボタンはわかりやすく。これは当たり前のようでいて、実際にはできていないサイトが多いものです。

実際にヒートマップで見ると、CTAボタンが見落とされていたり、ナビゲーションが複雑すぎて離脱が起きていたりするケースが珍しくありません。

デザインを一新する前に、まず今のサイトのヒートマップを確認してみてください。どこが読まれていて、どこで離脱しているのかを把握すると、改善の優先順位が見えてきます。

いきなり全面リニューアルをするよりも、ファーストビューの改善だけで問い合わせが増えた事例は、実はたくさんあります。

大手と差別化するために必要なUSPの考え方

「費用」以外で心をつかむポイント

大手が資金力とブランド力で市場を押さえにくる中、中小規模の事業者が同じ土俵で戦うのは難しいと思います。だからこそ、自社ならではのUSP(独自の強み)を明確にし、それをWebサイトで伝える必要があります。

面白い事例として、「終活からシニア世代を解放する」というミッションを掲げている事業者があります。単に住む場所を提供するのではなく、住み替えにまつわる煩雑な手続きや心理的負担から解放するという価値提案です。これは費用面では大手と勝負にならなくても、理念や姿勢で共感を得られる可能性があります。

立地の強み、地域の医療機関との独自の連携体制、入居者同士のコミュニティの濃さ。大手にはないきめ細かさや、特定の層に深く刺さるポジショニング。こうした強みを持っている事業者は少なくないのですが、それがWebサイト上で言語化・可視化されていないケースが非常に多いように思います。

USPをWebで伝えるための具体策

USPを見つけたら、それをWebサイトの各所で一貫して伝えていくことが大事です。

トップページのキャッチコピーで、自社の理念や独自の価値を一言で伝える。入居事例のページで、その価値を実際に体験している方のエピソードを紹介する。ブログでは、事業者としての考え方や取り組みを日常的に発信する。

この「一貫性」が信頼を生みます。トップページでは理念を語っているのに、他のページでは設備の羅列だけ、というのでは説得力がありません。

サイト全体で同じメッセージが伝わるように設計するのは地道な作業ですが、これができている事業者は、Webサイトからの問い合わせの質が明らかに変わってくるはずです。

選ばれる事業者になるために

シニア向け高級賃貸マンションの市場は、確実に拡大していきます。しかし、参入する事業者も増え、大手の存在感はますます大きくなるでしょう。

そんな中で選ばれるために必要なのは、派手な広告や華やかなデザインではなく、入居を検討しているシニアやそのご家族の不安に真正面から向き合い、信頼を一つずつ積み上げていくことです。

Webサイトは「作って終わり」ではなく、コンテンツを育て、改善を重ね、検索エンジンからの信頼もユーザーからの信頼も同時に高めていきましょう。

正直に言うと、これに近道はありません。でも、だからこそ、コツコツ積み上げた事業者が最終的に選ばれると思います。20年以上Web集客に携わってきて、この原則だけは変わらないと確信しています。

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桑原 敬

この記事を書いた人

桑原 敬(Takashi Kuwahara)

代表/プロデューサー

2003年にフリーランスのWebディレクターとして独立。2006年に株式会社桑原敬事務所を設立し、数多くの企業Webサイトや通販サイトの構築やコンサルティングを手がける。
2006年からレベニューシェアでのWebプロデュースを軸としたビジネスを展開し、これまでコンサルティングを行ったクライアントの中には年商が10倍以上になった実績もある。現在はWeb以外の分野でも、働きかたプロデュースなど幅広い分野で活動を行っている。

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